研究課題/領域番号 |
24530300
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
橋本 貴彦 立命館大学, 経済学部, 准教授 (80510726)
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研究分担者 |
田中 祐二 立命館大学, 経済学部, 教授 (40217089)
松本 朗 立命館大学, 経済学部, 教授 (70229540)
佐野 聖香 東洋大学, 経済学部, 准教授 (40469094)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 国際産業連関表 / 分業 / 実質為替レート / 生産性 |
研究実績の概要 |
2014年度は,前年度に引き続き,8月11日・12日にセミナーを開催した(セミナー名:Productivity Measurement and Exchange Rates)。ただし,予定した海外招聘研究者が都合で欠席となったため,本科研メンバーによる研究報告と討議のみとなっている。このセミナーでは,EU統計局等が作成している世界産業連関データベース(World Input Output Database)に用いて計測した40ヵ国35産業の生産性と交易条件との関係をみた実証研究と,中間財貿易に関する理論研究について討議した。セミナー後,実証研究については,研究代表者の橋本と研究分担者の佐野が作業を進め,佐野が査読付き論文を完成させている。先行研究サーベイの作業に関しては大きく二つの作業を実施した。第一に,国際経済学の分野で著名な研究者の多国間の生産性と交易条件について数多くの研究成果を残した故中川信義氏(大阪市立大学経済研究所・名誉教授)の著書の編集を研究分担者の田中祐二が担当し,御茶の水書房より刊行している。第二に,著名な生産性研究者の泉弘志氏(大阪経済大学経済学部・名誉教授)の単著に関して研究代表者が書評をまとめている。この準備のために,本年度は研究会及び打ち合わせを4回以上実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
生産性と交易条件に関わる先行研究のサーベイの作業はほぼ達成し,現在は世界産業連関データベースを用いた実証研究を行う作業段階に入っている。この作業も研究報告に必要な計算・計測はほぼ終えており,2014年度にこの世界産業連関表を用いた実証研究の成果を研究分担者である佐野が公刊している。さらに,同データベースを利用した投稿中の論文として,労働投入量と最終需要との関係を検討したものがある。この研究は,交易条件と生産性や分配との関係を数量的に示すように発展できるものである。今後,さらに内容を精緻化し,論文を公表していく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
先行研究を検討し得た研究方向を以下に記す。第一に,交易条件と価値(投下労働量)の関係であり,第二に搾取の区分についてである。まず,二国間の実質為替レートを二ヵ国間の輸出財の生産性が決定するというYoshikawaの研究とは,別の関係であるという認識に立って研究を進める。すなわち,Yoshikawa等の既存研究では交易条件等の価格情報がいったん与件として与えられ,費用単位の技術選択が行われるとする。一方,本計画では,費用単位の技術選択とは別の視点の中間財等を考慮した労働単位の技術選択に注目する。今後,二つの技術選択の基準の相違点や一致点について検討する。第二に,搾取の区分に関する件である。研究分担者の田中祐二が編集した中川信義氏の著書では不等労働交換と呼ばれる最終財の輸出を通じた搾取区分に焦点を当てている。これは近年のグローバル・バリュー・チェーンを巡る議論を整理するためにも有用である。言い換えると,交易条件の変化によって,当該国の貿易による付加価値の配分が変化するということである。以上の点に留意し,今年度も研究会を複数回開催し,世界産業連関表を用いた実証研究の論文をまとめていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
2014年8月に予定していた国際セミナーを招聘研究者の都合で中止したため,未使用額が発生した。セミナー自体は招聘研究者を除いたメンバーで予定通りに実施している。
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次年度使用額の使用計画 |
①学術論文の翻訳費用(2本分)に充てる。②2014年3月に研究交流したShaikh Anwar教授(New School University)と研究交流するための費用として充てる。
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