研究課題/領域番号 |
24530303
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
高塚 創 香川大学, 地域マネジメント研究科, 教授 (50304572)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 新経済地理学(NEG) / 交易費用 / 自国市場効果 / 企業立地 / 貿易政策 |
研究概要 |
本研究課題の計画に従って,今年度は(1)基本モデルの構築とその性質の吟味,および(2)その貿易政策への適用を中心に研究を遂行した.具体的には,農業財の交易費用,および地域間賃金格差を考慮したNEGタイプの二地域(国)一般均衡モデルを構築し,その均衡の性質を明らかにした.まず,一生産要素(労働)のケースについて,交易費用と企業立地・貿易パターン・厚生との関係を明らかにし,既存研究とは異なり交易費用の低下(自由貿易政策)が必ずしも大国への集積や利益をもたらすわけではないことを明らかにした.この研究成果については,Journal of the Japanese and International Economies誌に発表した.一方,資本を加えた二生産要素のケースについても,交易費用と企業立地・貿易パターン・厚生との関係を明らかにし,資本の移動可能性が自国市場効果(home market effect)に本質的に関わること,一生産要素の場合と同じように交易費用の低下が必ずしも大国への利益をもたらすわけではないことを明らかにした.これらについては,Canadian Journal of Economics誌,およびEconomic Theory誌(掲載決定)に発表した.最後に,この二生産要素のモデルを用いて,一方的な貿易保護(unilateral protection)がもたらす影響について分析を行った.これも先行研究とは異なり,そのような保護政策が自国の物価指数を低下させるかどうか(price-lowering effect),自国の厚生を高めるかどうか(welfare-improving effect)については,貿易財の代替の弾力性の大きさに依存することが明らかになった.この結果については,三件の国際会議において発表を行い,現在投稿論文を準備している段階である.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「研究実績の概要」についても記したように,本研究課題の計画に従って,(1)基本モデルの構築とその性質の吟味,および(2)その貿易政策への適用を中心に研究を遂行し,三本の論文を学術専門誌に刊行することができた(うち一本は掲載決定).したがって,おおむね順調に進展していると考えられる.
|
今後の研究の推進方策 |
今後も本研究課題の計画に従って,今年度構築した基本モデルの(2)貿易政策への適用,(3)環境政策への適用を中心に研究を実施する.(2)については今年度もある程度は行ったが,関税収入を考慮しない非関税貿易政策の分析が中心であった.次年度は関税を明示的に考慮した貿易政策の分析を行っていく.また,温暖化ガス削減政策を念頭において,環境税,排出権取引制度,カーボン・オフセット制度,企業の排出削減行動(abatement activity)を明示的に考慮したモデルに拡張を行い,そのような政策が企業立地や地域間格差に与える影響についても分析を行う.これらについては,基本的に解析的な結果を求めることを目指しているが,場合によっては数値シミュレーションや実証的な検討を行っていく.そしてその研究成果を国内外の学会・研究会で発表し,学術専門誌への投稿を順次進めていく.
|
次年度の研究費の使用計画 |
該当なし.
|