今年度も空間経済モデルを応用して,貿易政策および国際格差への応用を中心に研究を遂行した.まず,貿易政策への応用については,二国・一財・二要素(労働,資本)のモデルを用いて,一方的な貿易保護(unilateral protection)がもたらす影響について分析を行った.その結果,先行研究とは異なり,そのような保護政策が自国の物価指数を低下させるかどうか(price-lowering effect),自国の厚生を高めるかどうか(welfare-improving effect)については,貿易財の代替の弾力性の大きさに依存することが明らかになった.具体的には,代替の弾力性が2以上であれば,先行研究で言われているようなprice-lowering effectもwelfare-improving effectも発現しないことが明らかになった.この成果については,International Review of Economics and Finance誌に発表した.一方,国際格差に関しては,労働供給を内生化した二国・一部門・二要素のモデルを用いて,国の人口規模が賃金,所得,企業シェア,厚生などにどのような影響を与えるか(自国市場効果)について分析を行った.その結果,消費者のlove of varietyが強い場合には,大国において賃金や所得が低くなったり,厚生が低くなったりする場合があることが示された.これは先行研究では得られていない新しい結果である.この結果については,4つの国際会議と1つの国内学会,2つの国内セミナーにおいて発表し,現在専門誌への投稿にむけて準備中の段階である.
|