研究課題/領域番号 |
24530304
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
堀 宣昭 九州大学, 経済学研究科(研究院), 准教授 (50304720)
|
キーワード | 政治経済学 / メディア / 天然資源の罠 / 国際資本移動 / 直接投資 |
研究概要 |
主要なものとして、以下のテーマについて経済理論モデルを開発した。 (1)Institution, Foreign Investment and Resource Curse: 発展途上国について、国内の市場経済補完的な制度のレベルと、対内直接投資の質的な相違の関係について簡単なモデルを作成し、制度の進化についての政治的決定を分析した。市場制度の質が低く、レントシーキングが横行する途上国が豊富な天然資源を保有している場合、レントシーキング環境下での活動に比較優位を持つ低技術の直接投資をより多く引き付けてしまう。開発が低レベルで高技術の直接投資を得られないような国家の場合、天然資源を保有していることは有利に働くが、政治的にも制度の質向上のインセンティブが削がれ、産業化が滞るという「天然資源の罠」が生じうることを示した。 (2)A Collective Failure in News Market:政治システムの形態にかかわらず、政治過程にメディアが果たす役割は大きいが、メディアが、本来伝えるべきニュースを効率的に選択しうるか否かを分析するための簡単な理論モデルを作成した。モデルでは、視聴者のニュース理解能力には予備知識が必要となるという前提を設定し、過去に視聴したニュースからの知識の蓄積が、将来の同一テーマのニュースの理解力を高めるため、同一メディア内でもメディア間でも、取り扱うニュース内容の過度の集中が生じることを確認し、メディア産業の集中度の影響を分析した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成25年度は、作成した経済理論モデルのテーマが多岐にわたったため、全体として経済理論モデル群を完成させるのに相応の時間を要し、学術論文の形式でまとめあげる作業に遅れが生じた。
|
今後の研究の推進方策 |
引き続き、申請者が指導する大学院生との共同研究の形で研究を推進する。大学院生の入れ替わりを踏まえて研究組織を再編成し、そのための研究環境の整備を図る。 平成26年度は、まずは前年度までに作成したモデルのさらなる精緻化と、研究報告および研究成果の公刊を目指す。 今後は、有権者の合理性のレベルについて考察を加え、政治過程においてメディアが果たす役割や外交問題へのゲーム理論の応用など、よりミクロ経済学的理論の精緻化を図る研究を推進する。また、平成26年度は、本研究でのこれまでの成果を踏まえた、簡単な政治経済学モデルのサーベイを出版の形で公表する予定である。
|
次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は、作成した経済理論モデルを学術論文の形式でまとめあげる作業に遅れが生じた。このため、論文の英語校正や、国内外での研究報告を行う機会が乏しかったため、それらに伴う支出が見送られた。 平成26年度前半は、平成25年度に作成した経済理論モデルの英文校正作業等に約25万円、また既に確定している内外での学会報告のための旅費約75万円を予定する。さらに英語論文執筆支援ソフト購入の支出約10万円と、研究室環境整備のためのコンピュータ購入のための支出約30万円を予定する。
|