研究課題/領域番号 |
24530305
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研究機関 | 京都産業大学 |
研究代表者 |
大坂 仁 京都産業大学, 経済学部, 教授 (90315044)
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キーワード | 国際研究者交流 / 東アジア / 収斂 / 産業構造 / 労働生産性 / パネルデータ分析 |
研究概要 |
本年度の研究では、前年度に引き続き東アジアにおける収斂過程の実態や現状分析を行った。また、東アジア経済の収斂の要因分析についても分析を進め、特に中国に焦点をあて、省別データを利用して収斂および地域間所得格差における要因の一つとして産業構造や部門間の労働生産性の違いに焦点をあてて分析を試みた。 先行研究の一つであるRodrik(2013)は、UNIDOの国際データを用いて製造業部門における労働生産性の強い収斂性を見いだし、産業構造変化すなわち工業化の比重が高い国家間で所得レベルの類似性がみられるとした。一方で、Rodrik(2013)は非製造業部門で収斂性がみられないため、全体的に収斂がみられないのは特に低所得国で製造業部門の割合が低いこと、すなわち工業化が遅れていることを要因の一つに上げている。本年度の研究では中国の省別データを分析した結果、中国においても製造業部門を含む第二次産業の労働生産性が第一次産業および第三次産業の労働生産性より高いものの、標準偏差は3部門の中で一番低いものであった。つまり、中国の地域間所得格差においても、省別データからえられた労働生産性から、第二次産業の割合が相対的に高まれば地域間所得の格差も低下する可能性が示されており、Rodrik(2013)と同様な帰結がえられることになった。なお、労働生産性の違いの要因をパネルデータにより回帰分析を行った結果、プラスの要因として投資、FDI、高校就業者比率などが上げられ、マイナスの要因として貿易の開放度が示唆されることになった。なお、これらの詳細な要因分析については次年度も引き続き行っていく必要がある。(以上)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成25年度は本研究課題の2年目として、特に次の2つの項目について研究を行った。 1.東アジア経済における収斂過程の実態と収斂理論の検証(前年度の継続) 2.東アジア経済の収斂の要因分析 これらの項目を具体的に分析していくにあたり、前年度に引き続き関連データの収集を行い、また先行研究などの文献レビューを行った。また、収斂の要因分析については関連するマクロ経済データのみならず、教育などの社会統計データも用いて計量的にデータ分析を試みた。しかし、本年度は関連データの収集が当初の計画と比べて順調に進まず不十分であったため中国の分析しか行えなかった。他の東アジアの国々については次年度もデータ収集を続け、収斂の要因分析を継続して行う計画である。(以上)
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は、平成25年度に引き続き東アジア経済の収斂の要因分析として労働生産性の推移を検証するとともに構造変化との関連性についても分析を行っていく。また、東アジアにおける生産要素移動ならびに要素価格の推移に関しても分析を行っていく計画である。具体的には、次の2つの項目について研究を実施していく。 1.東アジア経済の収斂の要因分析:労働生産性の推移と産業構造変化との関連性(前年度の継続) 2.東アジアにおける生産要素移動および要素価格の推移に関する分析 まず、平成25年度に引き続き東アジア経済の収斂の要因分析を行うが、収斂の格差(convergence gap)についても分析を行っていく。要因分析に関連して労働生産性などの生産性データ、また産業構造変化などについてもどのような特徴がみられるのかMcMillan-Rodrik (2011)などを参考に実証分析を行い、次に生産要素移動および要素価格の推移に関しては時系列データやパネルデータを用いて分析を行っていくが、特に東アジアにおいてこれらのデータにどのような特徴がえられるのか検証していく。 なお、平成26年度は本研究課題の3年目として、平成25年度までの2年間で研究が計画通り進んでいるのか見直しを図る予定である。仮に、当初計画の遂行に支障が生じている場合には、その原因を解明するとともに今後の研究計画の内容について見直しを検討していく。(以上)
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