研究課題/領域番号 |
24530311
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 旭川大学 |
研究代表者 |
大野 成樹 旭川大学, 経済学部, 准教授 (50333589)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ロシア / 金融政策 / VAR |
研究概要 |
本年度の本研究課題は、金融政策の効果を論じる前段階として、金融政策指標を確定することを目的とした。金融政策指標には、貨幣供給量を指標とするMルールと、短期金融市場の金利を指標とするRルールがある。金融政策の影響を分析する際には、中央銀行がこの2つのうちどちらに重点をおいて金融政策を運営しているかを、十分に吟味する必要がある。 本年度の研究において明らかにされた点は以下の通りである。まず2000年以降を3つの時期に区分し、金融政策指標を考察した。2000年から2008年半ばまでの第1期においては、ロシア中央銀行はルーブル高圧力を弱めようと外国為替市場でのドル買い介入を継続し、不十分な不胎化のもとで貨幣供給量が大幅に増加した。他方、流動性が豊富な環境のもとでは、ロシア中央銀行の政策金利は銀行間貸借市場の金利にほとんど影響を及ぼさなかった。このことから第1期にはロシア中央銀行はMルールに従って行動していたとみなすことができる。 2008年半ば~2010年頃の第2期においては、世界金融危機への対処策として、ロシア中央銀行はレポ取引および無担保貸出により流動性を供給したが、他方で危機のもとでは政策金利の効果は限られていた。それゆえ、第2期においてもロシア中央銀行はMルールに従って行動していたと考えることができる。 2011年頃以降の第3期には、柔軟な為替政策のもとでロシア中央銀行の外国為替市場の介入額は大幅に減少した。為替レートの柔軟性を高める措置は、ロシア中央銀行の金利政策の有効性を高めるために採られたものであった。銀行間貸借市場の実質金利が、2012年にはプラスになる場面も見られたことから、金利政策の影響力が強まっていると考えられる。以上の点を考慮すると、第3期にはロシア中央銀行はRルールに従って行動する傾向が見え始めていると言える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、以下の4つの課題に取り組むことを目的としている。すなわち、(1)金融政策指標を確定すること、(2)国際原油価格を考慮したモデルで、金融政策が生産に与える影響を分析すること、(3)為替・金融政策や国際原油価格が、国内資産価格に与える影響を分析すること、(4)貨幣供給量や国際原油価格、生産の変化が、銀行貸出に与える影響を分析すること、がそれである。本年度は(1)の分析を行い、論文の形で成果を発表した。また、(2)および(3)に関する分析に着手し、推計結果を論文の形にまとめ上げつつある。以上より、本研究は計画通り進行していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究は、計画通り、上記の(2)国際原油価格を考慮したモデルで、金融政策が生産に与える影響を分析すること、(3)為替・金融政策や国際原油価格が、国内資産価格に与える影響を分析すること、さらに(4)貨幣供給量や国際原油価格、生産の変化が、銀行貸出に与える影響を分析することに取り組む。 (2)について。ロシアの多額の資源輸出は、ルーブル高圧力を生んできた。ルーブル高を緩和するためにロシア中央銀行は継続的にドル買い介入を行ってきたが、このことが結果として貨幣供給量の増加を招いた。本研究では、貨幣供給量の増加や国際原油価格の上昇が生産にどの程度影響を与えたのかを、インパルス応答、分散分解、ヒストリカル分解などを用いて明らかにする。特に、ヒストリカル分解を用いることで、原油価格が騰勢を強めた2006~2008年に、原油価格の上昇や貨幣供給量の増加が生産の増加にどの程度影響を与えたかを明らかにすることが可能となり、興味の持たれるところである。 (3)について。貨幣供給量や国際原油価格の変化が、株価や住宅価格など資産価格にも影響を与えると予想される。本研究は株価を資産価格の代理変数として用い、為替・金融政策や国際原油価格の変化がどの程度株価の変動に寄与したのか、さらには株価がどの程度生産の変化に寄与したのかを明らかにする。 (4)について。貨幣供給量や国際原油価格、生産の変化が、銀行貸出に与えた影響を明らかにする。ただし、銀行の設立母体(民間、政府系、外資系)により、銀行行動にも相違があると考えられるため、マクロデータの分析に留まらず、ミクロの銀行行動の相違も明らかにする。本研究は、政府系銀行が圧倒的なシェアを占めるロシアにおいて、銀行の設立母体がどの程度融資の供与に影響しているのかを議論する基礎をも提供することになろう。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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