平成25年度の研究は、(1)ロシアにおける金融政策指標を確定すること、および(2)ロシアにおける金融政策の効果を検討することに充てられた。 (1)について。金融政策の効果を考察する前段階として、貨幣供給量を指標とするMルールと、短期金融市場の金利を指標とするRルールのうち、どちらに重点をおいてロシア中央銀行が政策運営を実施しているかを考察した。分析に際しては2000年以降を、2000年から2008年半ばまでの第1期、2008年半ば~2010年頃の第2期、2011年頃以降の第3期に区分し、各期の金融政策指標を考察した。第1期および第2期においては、ロシア中央銀行はMルールに従って行動していたとみなすことができた。他方、第3期には、ロシア中央銀行はRルールに従って行動する傾向が見え始めていることが明らかになった。 (2)について。構造VARモデルを用いて、1999年から2011年までの為替・金融政策が、実物経済及び金融市場に与える影響を考察した。分析においては、原油価格、貨幣供給量M0、銀行間市場金利、実質GDPの4変数を組み入れたベンチマークモデルのほか、株価、為替レート、銀行貸出のいずれか1つをベンチマークモデルに組み入れたモデルを用いて推計を行った。(1)の分析結果に基づき、金融政策指標を貨幣供給量M0に設定したうえでインパルス応答分析を行った結果、生産に有意な影響を与えることが明らかになった。また、分散分解の結果より、生産変動の半分以上が貨幣供給量M0で説明できることが示された。ヒストリカル分解の結果によると、貨幣供給量ショックが生産の大きな部分を説明するのに対し、金利は生産の変動をほとんど説明しないことがわかった。さらに、本研究では金融政策の波及経路に関する分析も行い、銀行貸出よりも株価の方が大きな波及経路となっていることを明らかにした。
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