平成27年度の研究は、ロシアにおける金融政策の波及経路に関して、銀行貸出チャンネルが存在するかどうかを検証するために充てられた。具体的には、(1)銀行の特徴により貸出傾向は異なるのか、(2)金融政策ショックが与えられた場合、貸出傾向は銀行の特徴により異なるのか、(3)世界金融危機に際して、銀行の貸出は影響を受けたか、(4)銀行の所有者により貸出傾向に相違があるか、に関する分析が行われた。 分析に際しては、2005年~2012年におけるロシアの銀行のミクロデータを使用した。また先行研究に従い、銀行の特徴として、銀行の資産、流動性(流動資産/資産)、資本(資本/資産)の3つの基準を用いた。世界金融危機の時期である2008年および2009年に関しては、危機ダミー変数を加えた。さらに銀行の所有者は、ロシアの民間銀行、国有銀行、外資系銀行で区別した。 分析結果は以下の通りである。(1)に関しては、より小規模で、流動性が高く、および(もしくは)資本がより十分な銀行は、貸出増加率が高いことが分かった。(2)に関しては、資本がより不十分な銀行は、貨幣供給量の変化により敏感に反応する傾向が見られた。(3)に関しては、より規模の大きな銀行は、危機のショックを緩和することができる傾向が見られた。(4)に関しては、銀行の貸出ポートフォリオは、銀行の所有構造により異なるということはなかった。 以上の分析より、ロシアにおいても金融政策の波及経路に関する銀行貸出チャンネルが存在することが示された。
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