研究課題/領域番号 |
24530318
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研究機関 | 専修大学 |
研究代表者 |
金 榮愨 専修大学, 経済学部, 准教授 (50583811)
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キーワード | スピルオーバー / 企業グループ / 生産性 / 研究開発 / 技術的近接性 / 地理的近接性 / 取引関係 / ガバナンス |
研究概要 |
本研究では、企業ネットワークが企業および事業所のパフォーマンスに与える影響を分析するために、日本の企業・事業所の立地、財務データ、生産性などに関するデータベースを構築し、分析を行った結果、以下のような中間結論を得ることが出来た。 ①日本企業のパフォーマンスは、自社の研究開発だけでなく、技術的関連性が高い企業の研究開発にも性の影響を受ける(スピルオーバー)ことがわかった。企業間の技術的関連性の程度を分析した結果、同一企業グループ内での関連性がグループ外企業との関連性より2倍も高かった。また、その関連性から生まれる企業間の技術・知識のスピルオーバーが企業のパフォーマンスに与える影響は、2005年以降弱まっているが、企業グループ内ではむしろ強まっていることがわかった。 ②工場間の技術的関連性、地理的関連性、関係的関連性(取引や資本関係などによる)を分析した結果、技術的、地理的に近接する他企業の研究開発が当工場のパフォーマンスに重要な影響を与えることが明らかになった。大学など公的機関の研究開発からの工場へのスピルオーバー効果も確認できたが、その効果は研究開発を積極的に行っている企業ほど大きかった。取引関係や資本関係が企業間のスピルオーバー効果を高めることも確認できた。 ③都道府県レベルの生産性と工場の立地、工場間のスピルオーバー効果を分析した結果、大規模工場の閉鎖・移転によって、その地域の技術知識プールが減少し、全体的にスピルオーバー効果を低下させたことが確認できた。 ④企業グループ内の完全子会社と少数株主の存在する部分所有子会社の役割が研究開発において大きく異なり、完全子会社は主に生産性向上のため、部分所有子会社はイノベーションのために用いられることが多いことがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度から進めてきたデータベースの構築はおおむね予定通り進み、分析結果も得ている。ただ、政府の個票データの利用更新のための申請が大変混み合っているため、予想以上にデータの入手が遅れている。そのため、最終年度の分析や最終結果のまとめ、投稿などが若干遅れることが予想される。
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今後の研究の推進方策 |
今までのデータ分析から得た結果をまとめ、国内外の各種研究会や学会で発表を行い、ディスカッションペーパーとしても公開する。また、そこから得るコメントを元に、最終的な調整や追加分析を加えて、2,3本の学術論文として学術ジャーナルに投稿する。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究の3年目として、今までの研究のまとめと発表、コメントに基づいた論文の修正や追加分析、学術ジャーナルへの投稿などを行うが、そのために費用が生じるためである。 分析結果のまとめと追加的なデータ分析費用、発表のための旅費、論文校閲や補助的な入力のための費用、学術ジャーナルへの投稿費用などに支出する。
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