企業は、企業内ネットワーク(本社と事業所間、事業所と事業所の間)および企業間ネットワーク(資本関係、取引関係、地理的近接、技術的関係性、およびビジネス上の競争関係)など、様々なネットワークの中で事業活動を行っている。本研究では、立地、技術的特徴、取引関係、資本関係などによって形成されている企業内ネットワークと企業間ネットワークのデータベースを、日本の企業データを用いて構築し、このようなネットワークがネットワーク内の企業・事業所のパフォーマンスにどのような影響を与えるかを分析した。分析結果、以下の結果を得た。 ① 企業レベルで行っている研究開発は、その企業に属する事業所の生産性を有意に高めることが確認出来た。② 技術的関連性の高い企業の間では、他社の研究開発が自社の生産性を高める(スピルオーバー)効果が確認出来た。しかし、米国企業を対象にした研究とは異なり、日本では自社の研究開発による生産性向上効果が他社の研究開発によるスピルオーバー効果を上回った。③ 技術的関連性を通じた企業間スピルオーバー効果は2005年以降弱まったが、企業グループ内ではむしろ強まった。④ 企業間スピルオーバー効果は、企業間距離が遠くなるほど弱くなったが、取引関係がある場合は、距離と関係なくスピルオーバー効果が確認出来た。⑤ 企業グループ内で、少数株主が存在する子会社は完全子会社と違い、研究開発を活発に行い、比較的多くの特許を所有していることが分かった。しかし、このような子会社が完全子会社になると生産性は上がるものの、研究開発活動は低下する。
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