本年度は学術雑誌『経済志林』にて研究代表者と共同研究者とで「日露戦争前後の景気循環会計」を発表した。この論文では景気循環会計を用いて日露戦争前後(1901~10年)の日本の景気循環を分析した。推定の結果、他の国や時期を検証した先行研究と同様に、効率性ウェッジが一人あたり実質GNPのほとんどの変動を説明できることがわかった。この変動のうち、日露戦争前は金融制約の、戦争後は技術ショックの影響であると考えられる。他方で、日露戦争期には政府消費ウェッジがなければ実質GNPは低くなっていたであろうことも明らかとなった。これは、政府支出の効果を暗示するものである。また、2015年5月予定で齊藤誠編『震災と経済』(東洋経済新報社) で齊藤誠と研究代表者と共同研究者とで第4章「東日本大震災の家計消費への影響について: 恒常所得仮説再訪」を執筆した。ここでは、経済全体(マクロ経済)の消費動向を通じて、東日本大震災の経済的な影響を分析している。具体的には、消費理論のもっとも重要な理論仮説の1つである恒常所得仮説に基づき、東北地方の消費に与えた一時的な影響とともに、東日本大震災がマクロ経済の消費に与えた永続的な影響を推計している。推計結果は以下のようにまとめることができる。第1に、東日本大震災は、東北地方の消費を経済全体の消費動向から18%以上の大きさで一時的に引き下げるインパクトがあった。第2に、東日本大震災は、経済全体の消費のトレンドを2%から3%の大きさで永続的に引き下げる影響をもたらした。これら論文掲載の他に3つの国際学会で別々の研究を報告し、それを英文論文にして投稿中である。
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