研究課題/領域番号 |
24530323
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
清水 政行 琉球大学, 法文学部, 准教授 (60546133)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 中国 / 経済発展 / 環境効率性 / 環境クズネッツ曲線 / 汚染対策 |
研究実績の概要 |
本研究では環境パフォーマンスと経済発展の関係について、中国を中心に実証分析を行っている。27年度は主に日本を含めた東・東南・南アジア諸国との比較研究を進めた。27年度に実施した研究内容と、今後の展開については以下の通りである。 第一の研究として、マクロおよび工業部門を対象に大気汚染や温暖化物質を考慮した環境効率性を推計し、時系列データ分析を行っている。その結果、SOX、NOX、CO2排出量を考慮した場合、1970年代以降、日本を除く東・東南・南アジア諸国では生産効率の向上が排出効率の悪化によって相殺されていることが判明した。ここまでの研究結果から、中国では日本のように排出効率の改善を進めるための汚染対策努力が必要であると結論付けた。これに関連して28年度では、上述の研究をパネル・データ分析に拡張し、環境効率性の決定要因などの解明を進める。 第二の研究として、農業部門を対象に農業余剰物質を考慮した環境効率性を推計し、時系列データ分析を行っている。その結果、耕種農業について窒素やリンの排出量を考慮した場合、1960年代以降、東アジア諸国では環境クズネッツ曲線仮説は支持されるが、中国では単調増加傾向があることが判明した。このことから、中国では農業部門においても汚染対策努力が必要であると結論付けた。これに関連して28年度では、主要産業である稲作農業に焦点を絞って同様の分析を試みる。 その他の研究として、中国の工業部門を対象に汚染対策努力の効果についてパネル・データ分析を行っている。その結果、2000年代の中国ではSOX排出について、汚染の除去対策を通して汚染対策効果が存在することが判明した。このことから、中国では効果的な汚染対策努力が進められている可能性があると結論付けた。これに関連して28年度では分析を拡張し、環境効率性に対する汚染対策や環境規制の効果について明らかにする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
当初の研究計画を変更し、中国を対象にした分析をより精緻に実施することにしたために研究に遅れが生じている。その理由としては、当初予定したものよりも詳細な分析が可能になったたことと、追加的な分析を行えば環境効率性のより詳細な決定要因や変化パターンなどを解明することができると判断したためである。そのため、データセットの作成や先行研究のサーベイなどに時間を要している。 また、当初の研究計画を一部変更し、日本を含めた東・東南・南アジア諸国(台湾、韓国、タイ、マレーシア、インドネシア、インドなど)との比較研究も、中国を中心に据えて政策的なインプリケーションが大きいと思われるものに関しては実施しているため、研究に遅れが生じてしまっている。
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今後の研究の推進方策 |
25年度に変更した研究計画にしたがって、28年度でも引き続き実証研究を進めていき、本研究を完了させる。具体的な今後の推進方策は以下の通りである。 第一の研究として、これまでに推計した大気汚染や温暖化の原因物質(SOX、NOX、CO2排出量)を使用して、中国の工業部門における環境効率性を推計し、その決定要因などを検証する。具体的には、地域別のパネル・データ分析を行い、環境クズネッツ曲線仮説の検証と汚染対策や環境規制が与える影響について分析を進めていく。 第二の研究として、土壌汚染の原因である農業余剰物質(窒素やリンの排出量)を計測して、中国の農業部門における環境効率性を推計し、その変化パターンなどを検証する。具体的には農業全体もしくは稲作農業を対象に、地域別のパネル・データ分析を行い、環境クズネッツ曲線仮説の検証と汚染削減に関わるコストについて分析を進めていく。 最後に第三の研究として、日本を含めた東・東南・南アジア諸国(台湾、韓国、タイ、マレーシア、インドネシア、インドなど)と中国との比較研究をさらに進める。27年度に残された課題に取り組み、工業部門と農業部門における環境効率性の決定要因や変化パターンなどを検証する。具体的には、パネル・データ分析もしくは時系列データ分析を行い、環境クズネッツ曲線仮説の検証と汚染の決定要因について分析を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初に予定していた研究計画に遅れが生じたために、次年度使用額が発生した。具体的には、研究の打ち合わせに代わり研究を進めることを(資料収集や調査などを)優先させたことにより、また、国際会議での研究発表から国内での学会発表に変更したために、旅費の一部が未使用になった。さらに、研究論文を完成させることを優先したために、その他経費の一部が未使用になった。
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次年度使用額の使用計画 |
使用計画としては、第一に、研究に必要な各種公刊統計、参考資料、分析用ソフトウェアなどを入手・購入するための費用として、物品費を計上する。第二に、資料収集や調査、研究発表、研究の打ち合わせなどを行うための出張費用として旅費を計上する。最後に、英文学術雑誌への投稿を予定しているため、英文校正費などその他経費を計上する。
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