本研究の目的は、経済統合が、貧困、貿易赤字、財政赤字に悩む途上国に及ぼす影響を理論的、実証的に解明することである。理論分析では、経済統合による関税削減が経済厚生に及ぼす影響について、市場が完全競争的な場合と不完全競争的な場合との比較を行い、後者の場合政府の果たすべき役割が重要となることを確認した。実証分析では、アジアの最貧国としてネパールを取り上げ、CGEモデルを構築し、農地改革が所得分配及び貧困問題を改善することを明らかにした。関税削減と所得再分配政策(農地改革)をミックスさせることが重要であることを確認した。関税削減を行う場合、最適なポリシー・ミックスがどのようなものかは今後の課題である。
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