研究課題/領域番号 |
24530330
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
岸 道雄 立命館大学, 政策科学部, 教授 (20330011)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 公契約条例 / 賃金条項 / 生活賃金 / 労働協約 / 一般的拘束力 / 最低賃金 |
研究実績の概要 |
平成26年度はILO条約第94号の再確認とイギリス、ドイツをはじめとする海外諸国の公契約における賃金条項に関する文献調査と日本の地方自治体における公契約条例の実態調査を行った。研究成果の概要は次の通りである。 まず、ILO条約第94号は公契約における労働条件を特段優遇することを規定しているのではないことを確認した。次に、公契約のみに適用される賃金下限額があるかどうかについて,アメリカの生活賃金条例(Living Wage Ordinance)がこれに該当する。一方で、イギリスのロンドン生活賃金は公契約に限定されるものではなく、公共部門、民間部門を問わず、ロンドン市長と非営利団体等が企業等に対して自主的に採用することを求めるという形をとっている。ドイツに関してはやや複雑ではあるが、一般的拘束力を宣言した労働協約適用の場合は、民間の最低賃金基準が公契約に適用され、公共交通部門は拡張適用がない場合であっても労働協約が適用されることになっている。これら以外では、州政府の公共調達法において公契約に適用される最低賃金を多くの州が規定しているものの、2015年1月の連邦政府による全国一律最低賃金導入により、その意義が残るのはこの全国最低賃金額を上回る公契約適用最低賃金を設定している州のみとなった。また他のヨーロッパ諸国の中でも、一般的拘束力を有する労働協約が幅広く存在する国においては、そうした労働協約に基づく最低賃金を公契約に適用しており、設定の方向として民間から公契約への適用であることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成26年度においては、当初、デンマークとドイツの公契約における賃金条項についてその適用実態と設定根拠について現地ヒヤリング調査を行う予定であったが、公務等の諸事情により次年度に延期したため。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度においては、前年度に実施できなかったデンマークとドイツにおける公契約における賃金条項の適用状況とその設定根拠および、公契約外の労働者に適用される最低賃金額との関係について、現地ヒヤリング調査と文献調査により、詳細を明らかにする。さらに、日本の公契約条例との比較分析に基づき、日本の公契約条例と最低賃金制度との関係についての考察と政策提言を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初、デンマークとドイツの公契約における賃金条項の適用状況とその設定根拠、公契約外の労働者に適用される最低賃金額との関係について、現地ヒヤリング調査を行う予定だったが、公務等の諸事情により、現地ヒヤリング調査を実施できなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度にデンマークとドイツの公契約における賃金条項の適用状況とその設定根拠、公契約外の労働者に適用される最低賃金額との関係について、現地ヒヤリング調査を実施する。さらに、日本の公契約条例との比較分析を行うために必要な図書購入費として使用する計画である。
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