研究課題/領域番号 |
24530334
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研究機関 | 帝塚山大学 |
研究代表者 |
山内 康弘 帝塚山大学, 経済学部, 准教授 (20533996)
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キーワード | 介護 / 費用効率性 / 包絡分析法 |
研究概要 |
介護サービスの費用効率性を計量的に把握し、市町村などのサービス提供における責任主体の取り組みやサービス、特徴、政策、外部環境などによる影響が統計的に効果を有するのか否かを検証し、改善策を検討することは、政策的に有意義といえる。本研究では、「包絡分析法(DEA; Data Envelopment Analysis)」とそれを発展させた類似のモデルを援用し、分析を進めている。 当該年度では、昨年度までの分析を更に発展させ、Thanassoulis et al.(2012)の分析手法を援用した。その結果、暫定的ではあるものの、(1) 「技術非効率性」による損失が最も大きく、続いて「価格非効率性」、そして「配分非効率性」の順である。(2) 「技術非効率性」による損失が最も大きいのは、労働コストによるものであり、特に、施設サービスを提供している介護スタッフの労働コストによるものである。(3) 「配分非効率性」による損失が最も大きいのも、施設サービスを提供している介護スタッフの労働コストによるものである。一方、(4) 居宅サービスを提供している介護スタッフの労働コストでは「配分非効率性」はほとんど存在せず、むしろ居宅サービスを促進することによって「配分効率性」は改善することが示された。この検証によって、国全体ではおよそ20%の潜在的な非効率性が存在することが示された。当研究の結果から、施設サービスの見直しとともに、居宅サービスの促進が効率性の改善に寄与する可能性が高いと言える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本申請研究では、日本の介護分野を対象として、サービスの質、外部環境(非裁量・制御不能要因)などを考慮したうえで、サービスの生産効率性を計量的に横断面及び時系列で把握することを目的としている。そしてこれまでの先行研究の欠点を踏まえ、本申請期間(3年間)では、以下の研究を遂行することとしている。 (1)効率性測定へのサービスの「質」の包含 (2)効率性測定への外部環境(非裁量・制御不能要因)の包含 (3)時系列への拡張、介護保険施行後10年間の効率性評価 当該年度では、Ruggiero(2004)の指摘に沿って、効率性に影響を与えうる「外部環境」を計量モデルに包含すべく、データベースを構築する予定であったが、前年度取り組んできた、効率性測定へのサービスの「質」の包含、費用効率性の分解に関する研究が、最新論文の手法を取り入れることによって、予想以上に時間がかかり、当該年度に予定していた作業が終了していない。早々に進めることとする。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、当初の研究目的のうち、(2)効率性測定への外部環境(非裁量・制御不能要因)の包含、及び、(3)時系列への拡張、介護保険施行後10年間の効率性評価について進めていく方針である。特に(3)については、Ruggiero(2004)が指摘した、効率性スコアと非裁量・制御不能要因の同次決定性によるバイアスを回付するため、Simar and Wilson (2007)に従いブートストラップ手法による2段階推定を実行する。そして、非裁量・制御不能要因をコントロールしたうえで、Kornai(1986)が指摘した「ソフトな予算制約の問題」の存在の有無を仮説検定し、当分野の研究に貢献する。また「競争環境と効率性の関係」、「事業所のチェーン展開と効率性の関係」、「非営利・営利と効率性の関係」に関する仮説等について検証し、質及び外部環境指標の包含の有無によって検証結果がどのように変化するのかを明らかにする。 さらに、過去2年間にとりまとめたデータベースと研究成果とともに、時系列を加えたパネルデータによる効率性測定を行い、介護保険施行後の過去10年間の効率性変化を測定する。2006年の制度改正による「予防介護への重点化」、「一部定額払いの導入」、そして、政権交代による2009年からの「介護基盤の緊急整備」が効率性スコアにどのように影響したのかを検証する。そして、いわゆる「フロンティア効果」と「キャッチアップ効果」にそれぞれ分解し、技術進歩による効率性の向上がこの10年間でどの程度進んだのかなどを明らかにする予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
2013年1月に長男が生まれ、育児のため、研究時間が少なったことが最大の理由といえる。また、当該年度では、Ruggiero(2004)の指摘に沿って、効率性に影響を与えうる「外部環境」を計量モデルに包含すべく、データベースを構築する予定であったが、前年度取り組んできた、効率性測定へのサービスの「質」の包含、費用効率性の分解に関する研究が、最新論文の手法を取り入れることによって、予想以上に時間がかかり、当該年度に予定していた作業を終了することができなかったため。 今後は、当初の研究目的のうち、(2)効率性測定への外部環境(非裁量・制御不能要因)の包含、及び、(3)時系列への拡張、介護保険施行後10年間の効率性評価について進めていく方針である。特に(3)については、Ruggiero(2004)が指摘した、効率性スコアと非裁量・制御不能要因の同次決定性によるバイアスを回付するため、Simar and Wilson (2007)に従いブートストラップ手法による2段階推定を実行する。そして、非裁量・制御不能要因をコントロールしたうえで、Kornai(1986)が指摘した「ソフトな予算制約の問題」の存在の有無を仮説検定し、当分野の研究に貢献する。また「競争環境と効率性の関係」、「事業所のチェーン展開と効率性の関係」、「非営利・営利と効率性の関係」に関する仮説等について検証し、質及び外部環境指標の包含の有無によって検証結果がどのように変化するのかを明らかにする。
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