研究課題/領域番号 |
24530338
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 公益財団法人国際東アジア研究センター |
研究代表者 |
戴 二彪 公益財団法人国際東アジア研究センター, その他部局等, 主席研究員 (20300840)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 投資移民 / 国際移動 / メカニズム / 制度格差 / リスク回避 / 経済影響 / 中国 |
研究概要 |
投資移民とは、一部の国で設けられる「投資移民」プログラムの要求に従い、一定額以上の投資を行って投資先国の永住権を取得した移民を指す。本研究は、発展途上国の中国から海外への投資移民が急増している現象に着目し、高所得者の国際移動に影響するリスク回避動機と制度格差要因などの視点から、各国の投資移民制度の仕組みと中国国内の経済社会動向を考察したうえ、中国出身の投資移民の実態(規模、推移、投資分野、個人特徴)、投資移民ブームの発生メカニズム、及びこうした動向による中国と受入れ国への経済的影響を明らかにしたい。 本研究の研究期間は3年間(平成24年~26年)となっているが、平成24年度では、まず、中国の投資移民の主な転入先諸国(アメリカ、カナダ、オーストラリア、シンガポールなど)の移民統計資料を収集し、近年中国から海外への投資移民の実態の一部(移動規模、推移、転出地と転入先構造)を考察した。また、統計データとヒアリング調査結果に基づいて、中国人投資移民の地域分布の影響要因についても分析し始めた。初歩な考察・分析結果は、次の通りである。 (1) 中国は、最近数年のアメリカ、カナダ、オーストラリア、シンガポールにおける外国生まれ投資移民の最大送出地となっている。 (2) 経済成長や不動産価格の高騰に伴う中国国内の高所得者の資産規模の拡大、政治体制の改革が遅れている中国への高所得者のリスク回避意識の上昇、子供の教育・将来のための環境作り、海外の投資機会の開拓などは、中国人投資移民の主な転出動機だと見られる。 (3) 中国政府と経済界は、投資移民の形で民間企業家をはじめとする高所得者の海外転出の増加に強く懸念しているのに対して、転出先諸国は、概して中国人投資移民を歓迎している。注目すべきことは、投資移民プログラムが汚職官僚の海外脱出の重要経路の一つになっていると見られる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度では、計画通り、各国の投資移民制度の仕組みと中国国内の経済社会動向を考察したとともに、中国の投資移民の主な転入先諸国(アメリカ、カナダ、オーストラリア、シンガポールなど)の移民統計資料を収集し、近年中国から海外への投資移民の実態(移動規模、推移、転出地と転入先構造)を分析した。 25年度のアンケート調査用経費を確保するために、24年度では海外訪問の回数・滞在時間を減らしましたが、海外の研究仲間の協力で、分析に必要な統計データと参考資料を順調に収集し、24年度の研究目標をほぼ達成した。
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今後の研究の推進方策 |
いままで、マクロな統計データと参考資料の収集は順調に進んでおり、24年度の研究目標をほぼ達成したが、投資移民の行動を深く分析するためには、アンケート調査などを通じて個人レベルのミクロデータの収集とそれに基づく分析が重要である。ただし、25年度以降に中国と北米で実施する予定の現地アンケート調査の費用は、調査難度の上昇や円安などの影響で当初の想定額を大きく超えると予想される。アンケート調査用経費を確保するために、また日中関係の緊張化という政治環境要因もあって、24年度では、予定していた海外(中国・北米など)訪問の回数・滞在日数をできるだけ減らしました。その結果、92万円程度の経費が節約され、25年度以降のアンケート調査や研究会開催のために使用すると計画されている。
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次年度の研究費の使用計画 |
25年度 2013年5~10月に、まず、海外在住の中国人投資移民(500人程度)を対象に、移民の個人属性・移住動機・現在居住国を選択した理由・移住後のメッリトとデメリット・現在の生活と事業状況および中国国内とのビジネス関係などについてアンケート調査を行う。また、上海経済圏(浙江省、江蘇省、上海市)を中心に、中国国内在住の民営企業家・高所得者(1000人程度)を対象に、海外への移民意向についてアンケート調査を行う。所要経費:アンケート表配布・回収費用50千円;中国国外調査協力者への謝金300-500千円;中国国内調査協力者への謝金300-500千円;旅費(北米・オーストラリア・中国調査各1回)約500千円。2013年11月~2014年3月:①中国の民営企業家の移民意向と影響要因、②中国投資移民の移住国選択の影響要因についてワーキングペーパー(2本)を完成し、関連学会・研究会で報告。所要経費:150千円(研究会出席旅費など)。 26年度 2014年4~9月に、投資移民による転出地域への経済影響について、中国の研究者と共同調査を行い、共同論文(2本)を作成する。所要経費:旅費200千円;データ・資料費100千円;謝礼100千円。2014年10~12月に、投資移民による転入先(地域)への経済影響について、統計データに基づいて分析するとともに、現地調査も行う。特に東アジアの転入先(韓国・シンガポールなど)への影響について、日本への示唆を得るために、すべて現地調査を実施する。所要経費:旅費600千円。2015年1~3月に、3年間の調査・分析結果に基づいて研究報告書を作成; 海外・日本国内の研究者(4人程度)を招聘し、国際ワークショップ(1日)を開催;各国の専門家の意見を参考し、報告書の内容を修正。所要経費:招聘研究者(4人)の旅費400千円、謝礼300千円;印刷費・消耗品など100千円。
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