研究課題/領域番号 |
24530338
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研究機関 | 公益財団法人国際東アジア研究センター |
研究代表者 |
戴 二彪 公益財団法人国際東アジア研究センター, その他部局等, 主席研究員 (20300840)
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キーワード | 投資移民 / 国際移動 / メカニズム / リスク回避 / 制度格差 / 経済影響 / 中国 |
研究概要 |
本研究は、中国から海外への投資移民が急増している現象に着目し、高所得者の国際移動に影響するリスク回避動機と国際制度格差要因などの観点から、関係諸国の投資移民制度の仕組みと中国国内の経済社会動向を考察したうえ、中国から海外への投資移民の実態、投資移民の発生メカニズム、及びこうした動向による中国と受入れ国(地域)への経済的影響を明らかにしたい。本研究の研究期間は3年間(平成24-26年)となっている。平成25年度では、引き続き中国人投資移民の主な転入先国の関連統計資料を収集するとともに、一部の国で現地調査・考察を行った。また、中国における所得水準の一番高い三大都市圏(上海経済圏、華南経済圏、首都経済圏)で、移民仲介機関、投資移民の国内家族、潜在投資移民(民営企業家、高所得者など)を対象に、聞き取り調査を実施した。まだ研究途中であるが、次の分析結果が得られている。 ① 中国から海外への投資移民の規模が拡大しているとともに、転入先も多様化している。人気の高いアメリカ、カナダ、オーストラリアの他、「投資移民」プログラムを増設した欧州諸国及び東アジア諸国(シンガポール、韓国など)への中国人投資移民数も増大している。 ②経済の高成長と都市部不動産価格の高騰に伴う中国における高所得者の資産拡大、政治体制改革と法整備の遅れによる高所得層のリスク回避意識の上昇、子供のための教育環境づくり、海外のビジネス機会の開拓などが、海外へ転出する中国投資移民規模の増大の主な要因となっている。 ③「投資移民」プログラムを設けている諸国政府は海外からの投資移民を歓迎するが、不動産価格の高騰などを懸念してこれら国の社会輿論は、歓迎一色ではない。 ④中国経済の減速傾向が表れているが、政治体制改革が大きく推進されなければ、国際制度格差要因が存在し続けるので、中国から海外への投資移民規模はしばらく拡大していくと予想される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度において、中国国内の調査は計画通り行った。海外調査は、韓国・香港を中心に現地考察と聞き取り調査を実施した。欧米諸国での調査については、統計データや政府の調査資料・関連研究論文を利用・参考しながら、時系列データを収集・整備しつつある。これらのデータ・資料に基づいて、国別の分析と研究論文の作成を進めている。その成果の一部は、中国の国家重点図書として出版された『華僑華人青書:華僑華人研究報告(2013)』(中国語;中国社会科学文献出版社、2014年1月)に収録されている。 上述したように、25年度の調査・研究が概ね順調に進展しているが、欧米諸国での現地調査を補強する必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
24年-25年度では現地調査について、中国国内と東アジア諸国を中心に行われていたが、今後、北米をはじめ、米欧での現地訪問・補足調査を実施する予定である。26年度では、こうした現地調査(アンケート調査を含む)で得られた個人・家庭レベルのミクロデータと統計資料などマクロデータの両種類のデータに基づいて、中国人投資移民ブームの発生メカニズム、転入先構造の規定要因、転出地と転入先への経済影響を詳しく分析する。
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次年度の研究費の使用計画 |
理由:25年度の一部の研究協力者(米・欧における中国人投資移民に関するデータ整理・現地調査を協力してくれるもの)への謝礼は、最終年度(26年度)に支払うことになったから。 26年度の研究費(直接経費約231.8万円)の使用は、次のように計画されている。 ①物品費:20万円;②米欧での海外調査と学会報告(6月:北米;8月:欧州;オーストラリア:11月)の旅費:70万円程度;③東アジア(中国・シンガポール)での追加調査(2-3回)の旅費:30万円程度;④日本国内の学会・研究会出席(2回程度)の旅費:10万円程度;⑤北九州で開催される国際セミナーの参加者(4人)の旅費:40万円程度;⑥研究協力者への謝礼(3-4人):50万円程度;⑦その他(報告書の印刷、英文論文の校正など):10万円程度。
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