本研究は,発展途上国の中国から海外への投資移民が急増している現象に着目し,高所得者の国際移動に影響するリスク回避動機と制度格差要因などの視点から,各国の投資移民に関する受入れ制度の仕組みと中国国内の経済社会動向を考察したうえ,中国出身の投資移民の実態(規模,推移,送出地・目的地構造など),投資移民ブームの発生メカニズム,及び投資移民の国際移動による中国と受入れ国への経済的影響を明らかにしようとするものである。 本研究の研究期間は3年間(平成24年~26年)と定めており,平成24~25年度では,主に中国国内の投資移民送出地域を訪問し実態調査を実施したいたが,平成26年度では,中国国内の調査に加え,さらに米国・EU(ドイツなど)・韓国・香港など移民目的地での現地調査も実施し,投資移民による送出地・目的地の労働市場や不動産市場への影響について重点的に考察した。また,中国人投資移民のほかの重要な移民目的地(カナダ・オーストラリア・シンガポール)における関連状況については,関係諸国(地域)の移民統計(時系列データ)を収集したとともに,現地の研究者の協力で,多くの参考資料・専門調査データを入手した。 こうした調査・考察に基づいて,中国から諸外国(地域)への投資移民の実態,発生メカニズム,投資移民の国際分布の空間構造の規定要因,投資移民の移動による送出地・目的地への経済影響,などに関する分析および政策提言から構成される最終研究報告書をまとめており,2015年6月下旬に報告書を提出する予定である。
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