研究課題/領域番号 |
24530340
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
山口 昌樹 山形大学, 人文学部, 准教授 (10375313)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 中国 |
研究概要 |
邦銀のアジア進出について、シンジケートローン市場における競争動向を調査、分析した。調査対象とした国はメガバンクの店舗展開が著しい中国とした。分析のためにトムソン・ロイター社のデータベースDealScanを購入し、このデータベースが提供する貸出案件の条件や借り手の属性についてのミクロ・データを利用して邦銀の中国における貸出行動を実証分析した。 分析に際して設定した課題は、邦銀がアレンジャーとして参加する貸出案件にはどのような特徴があるかである。この課題に答えるため、融資金額、融資期間、建値通貨といった融資条件や、借り手については日系企業、外資系企業、上場企業、上場企業の子会社といった属性についてデータセットを構築して、邦銀が参加していない案件との比較分析をMann-WhittneyのU検定によって差異を析出した。 次に、邦銀が参加した案件の特徴を複数の要因を制御した上で明らかにする作業を行った。この作業は、邦銀参加の有無についてのダミー変数を被説明変数とし、上述の融資条件や借り手の属性を説明変数として回帰させるプロビット・モデルを用いた。また、説明変数の中で被説明変数への影響が大きいものを特定するため限界効果も算出した。 分析の結果、邦銀が参加するシンジケートローンは融資金額が大きく、融資期間が短い。また、米ドル建て貸出、運転資金の比率が高いことが分かった。さらに、借り手の属性として最も顕著なものは日系企業への貸出の比率が高いことであった。 こうした研究結果は日本の成長戦略における戦略的分野である金融業のアジア進出の実態を解明するための基礎資料を提供するものである。また、国際銀行業の競争構造を従来にない切り口から明らかにしたという学術的貢献もある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書に記載した「研究の目的」には3年間の研究期間に2つの分析を実施することを掲げた。平成24年度はそのうちの1つである、シンジケートローン市場を取り上げて邦銀と外国銀行との競合関係を探り、貸出行動の違いを取引案件のデータから統計的に析出して競争構造を浮き彫りにする、というものであった。 上述した研究実績の概要から分かるように、平成24年度は1つ目の分析を着実に実行し、すでに、研究結果を論文としてまとめ、学会誌に投稿を済ませている。このため、現在までの達成度を、おおむね順調に進展している、と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度の研究対象がシンジケートローンという特定の貸出市場であったため、競争構造の分析範囲をさらに拡大させて、アジアの債券市場における銀行間の競争構造を明らかにする。債券市場における銀行の債券引き受けに焦点を絞って、現地銀行と外国銀行との比較をまず行いたい。ただし、そうした分析に先立って、特定の国を選定した上で、債券市場について規制も含めた基礎データを収集して基礎資料を収集する。 そうした基礎作業を行った後に、ミクロ・データを購入して、市場構造をまず記述統計から客観的に観察する。次に、統計的手法に基づいて比較分析を行って外国銀行の引受行動の特徴を明らかにする。さらに、債券の発行条件や発行者の属性を説明変数として被説明変数であるスプレッドに回帰させる推計モデルによって競争構造を分析する。
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次年度の研究費の使用計画 |
債券市場の分析のためにデータベースを購入する。購入するデータベースはトムソン・ロイター社のデータストリームであり、購入額は年間95万円を見込む。平成25年度の科研費では賄えないため大学の運営費交付金と併せて購入する計画である。
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