研究課題/領域番号 |
24530340
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
山口 昌樹 山形大学, 人文学部, 准教授 (10375313)
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キーワード | プロジェクトファイナンス / ネットワーク分析 / インドネシア / メガバンク |
研究概要 |
本研究は邦銀の国際競争力を対象とした分析であり、注目が集まる国際インフラ金融の分野における競争を取り上げた。分析課題は邦銀がインドネシアのプロジェクトファイナンス市場でどのような位置を占めるかをシンジケート組成の観点から明らかにすることであった。この課題に答えるために分析手法としてネットワーク分析を採用し、ソシオグラムによるネットワーク構造の図示を試みた。また、クラスターの抽出によるグループ分けは従来にない切り口から市場構造を描く作業であった。 分析の結果、シンジケートの組成が邦銀を中心とする外国銀行のグループと国有銀行を中心とする現地銀行のグループとに分断されていることが観察できた。一般的な想定とは異なり、高度な金融スキルが必要だと考えられているプロジェクトファイナンスに現地銀行が積極的に参加している実情が明らかになった。また、グループ間の差異を案件の属性から確認したところ建値通貨に違いがあることが分かった。 本研究は国際銀行業、とりわけ邦銀が展開する国際競争について従来にない切り口から構造を明らかにした点で学術上の貢献があると評価できよう。また、インフラ輸出は日本の成長戦略の1つであり、その促進に向けた基礎資料を提供したことに本稿の社会的な意義がある。ただし、ここで示した市場構造はインドネシア一国で観察されたもので、シンジケートの組成が分断されているという構造が一般的な傾向なのかどうかは、他国についての検証を重ねる必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画調書に記載した研究計画では平成25年度に邦銀の貸出行動についての分析を進めることを掲げている。研究計画のとおり、インドネシアのプロジェクトファイナンス市場を取り上げて邦銀の市場における競争的位置づけの分析を完了している。 この研究成果は平成25年9月に日本金融学会秋期大会において学会報告を済ませた。さらに論文は平成26年2月に学会誌で発表済みである。このため、現在までの達成度を、おおむね順調に進展している、と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
邦銀の国際競争力を検証するもう1つの分析視角である経営効率の比較に取り掛かる。比較に際しては事前に収集・整理した進出状況に関連する定性情報を踏まえた上で比較の枠組みを構築する。なお、効率の差異を説明する要因を特定するために費用関数の推定といった追加的な分析も計画している。 経営効率の比較に使用するデータはビューローバンダイク社の銀行情報データベースBankScopeを購入してデータセットを構築する。手法とソフトウェアについて応募者は既に使用した経験があり速やかに分析に取り掛かることが可能である。また、効率性測定にはoperatingアプローチとvalue-addedアプローチの2つの手法を採用して計測の失敗を回避する安全策を取る。万一、データ包絡分析が不調に終わる場合は財務比率を用いて邦銀と外国銀行とを比較するという代替策を用意している。
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次年度の研究費の使用計画 |
第2の分析である銀行の経営効率について現地インタビューを年度内に行う計画であったが、インタビュー先の都合によって翌年度に持ち越しとなったために次年度使用額が生ずる状況となった。 主たる支出計画は2つある。海外調査のための外国旅費としての使用が1つである。2つ目は銀行の経営効率分析のためにデータベースの購入に助成金を使用する。
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