最終年度は大きな注目を集めている地方銀行の国際業務を分析した。国際業務は地銀の成長戦略と密接な関わりがあるため、このトピックは地銀にとって高い重要性を持つ。国際業務の中でも収益への貢献が期待される国際シンジケートローンを取り上げた。地銀の第一次国際化と第二次国際化とについて参加案件を比較し、国際シ・ローン市場における地銀の貸出構造の特徴を探った。 具体的には2つの課題に取り組んだ。第一の課題として、2つの期間において地銀の参加案件にどのような違いがあるかを調査した。分析の結果、地銀の国際シ・ローンへの参加状況と参加案件にいくつかの違いを観察した。まず、第一次国際化における地銀の活動は第二次国際化を凌駕していた。第一次国際化は地銀の幅広い参加という特徴を持つ。次に、借り手の国籍に大きな変化が確認できた。アジア諸国の借り手への融資は第二次国際化では半減し、その存在感を低下させた。建値通貨については、第二次国際化において円建て貸出が大幅に増加したことを観察した。参加行数で捕捉するシンジケート規模は第一次国際化の方がかなり大きかった。 第二の課題は、地銀が参加を選好する国際シ・ローンはどのようなタイプのものかを調査した。この課題に答えるためプロビット分析を採用し、限界効果を算出した。推計結果は地銀の貸出行動は2つの期間で似通っていることを示すものであった。地銀の参加を促進する案件の特徴は小さな融資額、大きなシンジケート規模、資金使途が通常業務であることが観察された。こうした選好は地方銀行のリスク負担能力や審査能力が限定的であることを反映していると推察される。一方、貸出行動に2つの差異が確認できた。1つには、第二次国際化において円の存在感が増大したことである。もう1つは、地銀の参加に対する格付けの影響が大きくなったことであり、背景には市場環境や借り手の行動の変化があると推測できる。
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