研究課題
最終年度に実施した研究の成果:第一に,地域間での生産要素賦存量の偏りをヘクシャー=オリーン・モデルにおける要素価格均等化の成立可能性という観点から評価する手法を提案した.提案した手法は,任意の数の地域,産業,生産要素について適用可能であるとともに,それぞれの生産要素の潜在価格を設定することで,地域間の要素賦存量の偏りを定量的に評価できる.この点で,従来この分野で用いられてきた「レンズ条件」と比較して汎用性を持つ.第二に,世帯人員が異なる世帯から構成される所得分布を評価する逐次的一般化ローレンツ支配基準の拡張を図った.従来,所得分布を比較する時点間で所得以外の属性の分布が異なる場合,一般化ローレンツ曲線ではなく分布関数の比較が必要とされてきたが,一般化ローレンツ曲線に若干の修正を加えた修正された一般化ローレンツ曲線による比較によって支配関係の有無を検証できることを示した.研究期間全体を通じた研究の成果:本研究では複数の属性を考慮して社会厚生を評価する手法の構築とその応用を,ローレンツ支配基準の拡張に焦点をあてて研究した.特に,様々な支配概念の有無を実際に検証するための手法を提案した.提案した手法は,単に支配関係の有無だけではなく,社会厚生を改善するために必要な再分配の規模やターゲットを明らかにできる点に特徴がある.応用例として中国における地級市レベルでの厚生分布を,所得だけでなく環境や医療の水準を反映する5つの属性に基づき評価した.その結果,沿海部の工業都市における環境水準の改善が社会厚生の改善を図る上で重要であることを示した.また,所得の源泉である生産要素賦存量の偏りを考察するための手法の構築を図るとともに,複数属性に基づく社会厚生の評価に関する理論的な検討を行った.
すべて 2014
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 謝辞記載あり 1件)
Letters in Spatial and Resource Sciences
巻: On Line First ページ: 印刷待ち
10.1007/s12076-014-0115-1