本研究では複数属性に基づく社会厚生を評価するための手法を考察した.特に,一般化ローレンツ支配基準の複数属性への拡張を図り,理論的に得られた結果を数量分析に適用するため,線形計画法に基づく手法を提案した.提案した手法は,比較する分布間で明確な支配関係が存在しないとき,社会厚生を改善するために必要な属性の不足量を示すことができるという点で再分配政策に対して明確な含意を持つ.この手法を中国の経済に適用することによって,環境汚染が中国における社会厚生の改善の隘路であることが分かった.また,生産要素の分布によって生ずる経済格差を考えるため,要素価格均等化条件の成立を確認するための手法を提案した.
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