今年度の研究として,以下の2つの研究を行った.第一の研究は,失業と財政政策,経済成長の政治経済分析である.財政政策に関する政治経済分析では,多くの研究が完全雇用を想定して分析を行っている.しかし現実には失業が存在し,政策の決定が失業と経済成長に影響し,さらに将来の政策決定に影響してくる.このような,現在の政策→失業・経済成長→将来の政策決定の動学的なメカニズムをモデル化したうえで,投票による政策決定を通じて決まる失業や経済成長を社会厚生の観点から評価した. 第二の研究は,公教育と社会保障,人的資本蓄積,経済成長の政治経済分析である.昨年度にも同様の研究を行ったが,そこで用いたモデルでは,分析の単純化のため物的資本を捨象していた.今回の研究では,物的資本と人的資本の2種類の資本を想定し,社会保障・公教育の政策決定が貯蓄,教育投資を通じて物的資本,人的資本に与える影響を見た.この分析によって,高齢化が社会保障,公教育を通じて経済成長に与える影響を評価した.
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