本研究は次の3つの課題に取り組んだ.第一に,世帯構成の変化が社会保障の決定にどのような影響をもたらすかを分析した.特に借入制約の役割を考慮し,片働き世帯が直面する借入制約が,社会保障を通じた再分配の政治的決定にどのような影響を分析した. 第二に,高齢化による投票人口の構成変化が社会保障を含む財政政策の決定を通じて経済成長に与える影響を分析した.第三に,再分配政策として社会保障に加えて公教育支出も考慮し,2つの再分配政策が投票を通じてどのように決まるのか,高齢化は2つの再配分政策の水準・比率にどう影響するのか,さらに再分配政策が人的資本蓄積にどのような効果をもたらすのか,を明らかにした.
|