本研究の目的は、証券取引所の取引システム高速化により始値形成に変化が生じたかを検証することにある.東京証券取引所の2010年1月における取引システム高速化の前後1年について、1日の取引開始前における投資家の発注行動および始値形成を分析した.高速化後、特に大型株で注文の小口高頻度化が進むとともに開始直前の発注キャンセルが活発になっている点で、発注行動の変化が観察される.しかし、始値の情報効率性は、高速化の前3ヶ月から低下するとともに、高速化の半年経過以降は元の水準に戻っている.高速化により恒常的な変化が発生しておらず、高速化そのものが始値形成を歪めるとはいえない.
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