研究課題/領域番号 |
24530348
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
西村 幸浩 大阪大学, 経済学研究科(研究院), 准教授 (90345471)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 租税競争 / 戦略的投票 / 地方分権理論(財政連邦主義) / 環境規制 / 非対称地域 |
研究概要 |
論文“Interregional Tax Competition, Environmental Standards, and the Direction of Strategic Delegation”(寺井公子氏との共著)においては、地域政府間や国家間が移動可能な資本獲得のために税率の切り下げ競争を行う「租税競争」および自地域・自国への投資誘因を目的とした「環境規制競争」が共に存在する状況の中で、代表選出に関わる戦略的委任(strategic delegation)の帰結を考察した。既存文献を拡張した経済モデルにおいて、戦略的委任の方向は、環境汚染からの住民の不効用と環境規制からの生産性の減少の比率に依存することが示された。また、既存文献が主に対象地域のケースを主に取り扱っていたのに対して、地域間に生産性の違い(片方の地域に生産性を優位にする地域レントがある場合)や人口の違いがあるケースなどを考察し、高生産性地域と低生産性地域、また大国と小国で、戦略的委任の程度や方向が異なることが示された。この論文は関西公共経済学研究会 2012年度第2回研究会(関西学院大学大阪梅田キャンパス)、名古屋大学大学院経済学研究科 平成24年度課題設定型ワークショップ⑥ゲーム理論とその応用(名古屋大学)、Microeconomics Workshop(東京大学)などで発表された。これらの発表においては、討論者からの高い評価と参加者からの有意義なコメントをいただいた。現在、学会報告や学術誌投稿のために準備中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究は、代替的な定式化(経済モデル)のもとでの、戦略的投票の帰結の再検討を、その目的の一つとした。地域政府間や国家間の租税競争や環境規制競争は、グローバル化された時代における公共政策のトレンドと今後を考える上で、非常に重要な経済モデルであるが、戦略的委任については、未だ多くの研究はなされていない。戦略的委任の程度や方向を示せたことは、関連分野の知見を高める上で有益な貢献となった。今年度の研究は発表可能なレベルに発展でき、国内外の学会やワークショップでの発表を果たすことができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度からの継続として、地球環境問題、地域間ないし国際的租税競争、地方公共財供給、対テロ対策など、多様な文脈において見られる公共財供給問題の経済モデルの文献調査を行う。とりわけ、近年の進展がめざましい、外部性に関する、コモンズおよびアンチコモンズに関する分析(2009年度のノーベル経済学賞受賞研究)は、本研究が主題としている、各地域政策の補完性が鍵概念として使用されている。複数の権利者が特許技術を相互利用する場合、空港やダムの建設に当たって少数の地主が反対を表明して既得権を行使する場合などが、それに相当する。また、規制や許認可をめぐる政府間財政関係の経済分析に用いられることもある(例えば、Blanchard and Shleifer, “Federalism With and Without Political Centralization: China Versus Russia,” NBER Working Paper 7616, 2000 や Berkowitz and Li, Tax Rights in Transition Economies: a Tragedy of the Commons ?,”Journal of Public Economics, 2000 など)。また、国内外の学会での文献調査および資料収集を継続する。また、関連研究において国際学会発表や査読付専門誌への掲載を果たしている知己にアドバイスをいただきながら、アイディアを発表可能なものに整えていき、国内外の学会での発表、学術誌への投稿の数をできるだけ増やしていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
台湾のAcademia Sinica、およびベルギーのThe Center for Operations Research and Econometrics(CORE)において研究を推進する予定である。C. C. Yang研究員(Academia Sinica)、Pierre Pestieau教授(CORE)、Francois Maniquet教授(CORE)ら、公共経済学や政治経済学が専門の研究家のサポートを得ながら、研究を進める。次年度の研究費は、この在外研究の滞在費、および研究に必要な書籍や物品の購入に充てる予定である。
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