研究実績の概要 |
最終年度では前年までに求めた実質消費量の期待成長率が観測不可能であり学習効果が影響する社債の価格とCDS保障料に関する均衡モデルを改良し実証研究を行った。本研究と最も近い社債価格に学習効果を応用した先行研究では債務不履行が起こる時は満期日のみであったが、First-Passage-Timeの手法を使いより現実に近いように満期日までに資産価値がデフォルト境界を初めて下回った時に債務不履行が生じるとした。このディフォルトが発生する条件はCDS保障料を計算する均衡モデルにも応用された。また債券価格と保障料率の計算値の閉じた解を求めることが不可能であるためシミュレーションを実行した。実際、企業の資産価値の時系列観測値のシミュレーションを100万回行い時間は約8分程度ですみ計算値を求めた。
実証研究のためキャリブレーションを行った。実質消費量の確率過程のパラメーターは米国の月次データ(1959:2-2016:2)から4状態マルコフ転換モデルを応用し評価し、期待成長率として妥当な結果として年率-7.5%,1.8%,4.6%,10.0%を得た。ディフォルトの条件を決めるデフォルト境界値と債券回収率は先行研究に従った。資産価値のボラティリティは債券の格付に依存し過去のディフォルト率に等しくなるように設定された。これらパラメーター値と、相対的リスク回避度(RRA)の値を変化させクレジットスプレッドとCDSスプレッドの条件なし期待値を求めた。例えば、4年満期の格付Baaのモデルが求めた信用スプレッドは1.44%を示し過去のデータ1.58%に近い結果となった。この値はRRAが合理的な値6.0で求められた。また、モデルが求めた5年満期の格付BaaのCDSスプレッドはRRAが同じ6.0で0.2%となり過去のデータ0.95%に比べ幾分低い値となったが、RRAが40の場合モデルは0.96%を示した。
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