研究課題/領域番号 |
24530355
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研究機関 | 秋田県立大学 |
研究代表者 |
宮本 道子 秋田県立大学, システム科学技術学部, 教授 (30469598)
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キーワード | 信用リスク / 欠測値 / 多重代入法 / neglog変換 / CRD中小企業データ / ロジスティック回帰分析 |
研究概要 |
欠測値を含んだCRD中小企業データの全件データと地方銀行の融資データを使って、ロジスティック回帰分析を行う場合において、欠測値を除いた完全データ、多重代入法によって欠測値を埋めたデータを構築した。次に、特定の財務変数は極端に大きな値、負の値、ゼロ近辺でのクラスターなどが混在し理想的なガウジアン分布とは程遠く、共分散を歪める可能性がある。正規分布への変換方法としてBox-Cox 変換があるが、Box-Cox変換の限界は、必ずしも正規分布に変換できるわけではないということと、負のデータは扱えないことが挙げられている。例えば、財務諸表の「利益」のような変数は負の値を取ることがある。そこで、 Whittaker et. al. (2005)が提案したneglog変換を行って、分布の歪みを修正し正規分布にしたデータを用いて信用リスクを計算した。結果、有意となる変数に違いが見られた。また信用リスクの計測では通常、財務データを用いたモデルを構築することが多いが、中小企業の場合、財務データがそろっていない場合が多い。しかし中小企業はリレーションシップバンキングによって得られる企業に関する非財務データがある。そこで地方銀行のデータを使って、非財務データと財務データがどのように信用リスクの計測に影響を与えるか分析を行った。参考文献[1] Whittaker, J., J. Whitehead and M. Somers. 2005. The neglog transformation and quantile regression for the analysis of a large credit scoring database. Applied Statistics 54: 863-878.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度はCRD中小企業データのサンプルデータを用いて分析したが、2年目は全件データを用いて、多重代入法などの統計的な欠測値処理法の適用について検討できた。またデータの分布にも着目し、Box-Cox変換、neglog変換を用いて分布の歪みを修正し、正規分布にしたデータを用いた分析を行った。信用リスクに対する非財務データの有用性については地方銀行のデータを用いて行いて分析し、信用リスクに対する影響を推定できた。
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今後の研究の推進方策 |
本研究で使用するCRD中小企業データは連続変数である財務データと企業データに含まれる男性/女性、学歴(大卒以上/大学中退/専門学校・短大卒/高卒/その他)などの大小の概念がない名義変数が含まれる。独立変数に、連続型とカテゴリカル型(連続変数、二分変数、順序変数、名義変数)が混在していてもよく、このようなロジスティックモデルにおいて複数の独立変数を用いるようなモデルを特に多重ロジスティック回帰と呼ぶが、本年度は多重ロジスティックモデルを用いたデフォルト推定モデルを検討する。 また、銀行業界の経営統合がもたらす小規模企業に対する融資の影響、融資における顧客情報の重要性、銀行の店舗配置なども検証したい。 統計的手法に関しては、財務データによくある欠損データ、財務データ特有の歪んだ分布などを考慮した先端的統計モデルないしアルゴリズムを開発し、高精度のリスク要因計測手法を提案したい。
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次年度の研究費の使用計画 |
旅費が予定より安くなったため。 統計数理研究所の研究者、CRD協会の研究員との定期的ミーティングを行い、分析手法の確認、意見交換を行うための国内旅費。国内外の学会での研究成果の発表も積極的に行っていく予定である。
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