研究課題/領域番号 |
24530355
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研究機関 | 秋田県立大学 |
研究代表者 |
宮本 道子 秋田県立大学, システム科学技術学部, 教授 (30469598)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 信用リスク / 欠測値 / 多重代入法 / neglog変換 / CRD中小企業データ / ロジスティック回帰分析 / 多重ロジスティック回帰分析 / 非財務データ |
研究実績の概要 |
欠測値を含んだCRD中小企業データベースから提供された財務データに対してロジスティック回帰分析を行い信用リスクを推定する場合において,前後期補完や多重代入法などの統計的な欠測値処理法の適用について検討した.また特定の財務変数は極端に大きな値,負の値,ゼロ近辺でのクラスターなどが混在し理想的なガウジアン分布とは程遠く,共分散を歪める可能性がある.財務諸表におけるデータの分布を考慮するためのこれらの手法について検討し,欠測処理におけるその影響についても考察した.2010年における完全データ(Complete Data),neglog変換した完全データ,前後期補完,neglog変換した前後期補完,多重代入法(MI),neglog変換した多重代入法 (MI+neglog)を行ったデータを使って,それぞれデフォルト確率の推定を行った.その結果,前後期補完,多重代入法,neglog変換後多重代入法とも完全データより分析に使えるデータ数が増え,有意となる変数が増えた.多重代入法に至っては、完全データと比べて利用できるデータ数は,2倍以上となった. 中小企業データは財務データがそろっていないこと多いため長年のリレーションシップバンキングによって得られる企業に関する非財務データを含めた信用リスクの推定モデルを構築した.連続変数である財務データと企業から提供された属性データ(男性/女性,学歴…)などの大小の概念がない名義変数が含まれる.そのように独立変数に連続型とカテゴリカル型が混在していてもいいロジスティックモデルである多重ロジスティック回帰を用いて,地方銀行の融資データにおいて分析したところ,財務データのみならず非財務データも信用リスク推定において有用であることが分かった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2年目から行っていたCRD中小企業データの全件データを用いた多重代入法による欠測値補完は統計数理研究所の生物統計分野で欠測値の専門家である野間助教との勉強会のあと修正した.野間助教のアドバイス通り100回の多重代入のあと,それぞれの変数ごとに平均値を求めて計算した.その結果,その他の欠測値補完法と比べても遜色のない結果が求められ有意となる変数が増えた.また欠測値を持つケースを計算から除外する場合と比べほぼ2倍のデータが使用可能となった.こちらの結果は電子情報学会誌に投稿中である. また,地方銀行データの財務データ・非財務データを用いた多重ロジスティック回帰による分析は国際会議で発表し,国際誌International Journal of Finance and Accounting に掲載された.
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今後の研究の推進方策 |
平成26年にCRD中小企業データの財務データと非財務データがどのように信用リスクの計測に影響を与えるか分析し,その結果を基に2014年度の統計関連学会連合大会で発表したが,地方銀行のデータと比べ,CRD中小企業データの非財務データの情報が少なく,十分な結果が得られなかった.そこで本年度は信用リスクに有効な非財務データの調査を行うこととする.
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度にCRD中小企業データの財務データと非財務データがどのように信用リスクの計測に影響を与えるか分析したが,地方銀行のデータと比べ,非財務データの情報が少なく十分な結果が得られなかった.そこで計画を変更し,信用リスクに有効な非財務データの調査を行うこととし,予定していた発表を取りやめたため未使用額が生じた.
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次年度使用額の使用計画 |
このため信用リスクに有効な非財務データの調査とその結果の発表を本年度に行うこととし,未使用額はその経費に充てることとしたい.
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