研究課題/領域番号 |
24530356
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
臼杵 政治 名古屋市立大学, 経済学研究科(研究院), 教授 (90539058)
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キーワード | 物価上昇率 / 賃金上昇率 / ポートフォリオ / 債券 / 株式 / 年金 / 構造VAR |
研究概要 |
1.主要な資産である国内国外の株・債券から構成されるポートフォリオの研究に関しては、リターンに関する基本的なデータベースを作成済みである。さらにBriere and Signori (2012)にならい、短期金利を含む各資産ごとのリターン、インフレ率ならびに賃金上昇率、及び配当利回り、長短金利差を変数とする、構造VAR(ベクトル自己回帰モデル)のパラメーター推計にとりかかっている。 2.当初は物価上昇率(インフレ)に対応したポートフォリオの研究を計画していたが、公的年金の給付が賃金スライドすることを考慮し、賃金を変数に含めて、物価・賃金上昇率に対応するための債券・株式からなる最適ポートフォリオを推計しつつある。 3.また、Miyao(2000)にならい、VARモデルの推計誤差(分散共分散行列)をもとに経済市場構造の変化の時点の特定を試みたところ、1994年度(第3四半期)に構造変化があったことが示唆されたので、その前後に分けてパラメーターを推計している。 4.Campbell&Shiller(2002)以来のVARモデルを用いてリスクの期間構造をモデルに取り入れた点、日本のデータで物価及び賃金上昇率の両方を変数に加えている点、経済市場の構造変化を考慮してその前後に分けてモデルのパラメーターを推計している点、などの意義が認められる 5.当初計画の内、ヘッジファンド、不動産などのオルタナティブ投資の効果とそのリスク管理については、カナダやオランダなど海外諸国の事例について文献などで調査を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
1.2014年度がA.厚生年金保険の財政検証、及び年金積立金管理運用独立行政法人の中期計画(基本ポートフォリオ)の改定期にあたる上、B.厚生年金基金の廃止や代行返上の基準の見直し、C. 2015年度からの厚生年金保険と公務員共済年金の一元化にむけた準備、が重なり、審議会や検討会のために時間を割かざるを得なかったこと。年間25回程度、本審議の他、(移動時間を除く)事前説明、準備だけで所要時間は70~80時間以上に達した。 2.同時並行的に進めている、公的年金の世代間公平(マスグレイブ基準とコトリコフ基準)についての研究に、特に2012~2013年度の前半にやや時間をかけてしまったこと。
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今後の研究の推進方策 |
1.構造VARのパラメーターを何通りか推計し、モンテカルロシミュレーションによって、物価や賃金上昇率に対応する上で、国内及び海外の株式・債券からなるポートフォリオをどう策定するべきかを明らかにしたい。 2.オルタナティブについては、諸外国の公的年金における役割を明らかにしつつ、それぞれの市場規模に対して公的年金の運用規模が大きいことから、例えば、配分比に上限(制約)をもうけた場合にどのような効果があるかを示したい。 3.金利上昇についても、例えば、モンテカルロシミュレーションにおいて、インプライド・フォワード・レートがマイナスになるパスを除外するなどの方法により対処することを試みたい。 4.最終年度でもあるので、ある程度の結果が出たところで、何らかの(実務)ジャーナルに投稿するなど発表を行いたいが、場合によっては1年間の延長の可能性・必要性を視野に入れておく。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究の遅れに伴い文献書籍・コンピューター関連の備品購入などを次年度に繰り越したため。 研究を進展させるにしたがい使用していきたい。
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