研究課題/領域番号 |
24530357
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 成蹊大学 |
研究代表者 |
永野 護 成蹊大学, 経済学部, 教授 (20508858)
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研究分担者 |
板倉 健 名古屋市立大学, 経済学研究科(研究院), 准教授 (90405217)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 国際情報交換 トルコ / 国際情報交換 韓国 |
研究概要 |
本年度は、実証分析におけるデータセットの作成を進め、企業の進出相手国法制度の定量指数データ、直接投資(クロスボーダーM&A、グリーンフィールド直接投資)データ、国データ・企業データセットの3つのデータを作成した上で、マッチングを行った。作成・マッチングされたデータセットを用い、法制面からの影響として、知的財産制度、株主権利関連法制、法人税制の直接投資活動に対する影響を検証した。さらに直接投資はクロスボーダーM&A、グリーンフィールド直接投資それぞれについて実証モデルを推計し、どの法制度が2つの直接投資のどちらに影響しているのか、双方に影響をしているのかを検証した。 分析の結果、次の実証結果が得られている。第一に、グリーンフィールド投資、クロスボーダーM&Aは、ともに投資実施企業の内部資金力や投資機会がその活動に影響を与える。一方で、グリーンフィールド投資とクロスボーダーM&Aは、ともに投資対象国の知的財産法制の影響を受けるものの、クロスボーダーM&Aの方が統計的にその影響を受ける可能性が高いことが示されている。また、クロスボーダーM&Aは、知的財産法制以外に投資対象国の投資家保護法制の影響も受ける傾向があり、この2つの投資対象国の特徴が、企業が直接投資を実施するに際し、いずれを選択するかの規定要因となっていることが実証的に導出されている。 クロスボーダーM&Aと国内企業M&Aの比較分析では、両者はともに共通な決定要因を持つものの、クロスボーダーM&Aは、投資対象企業の規模や業績パフォーマンスにより影響を受けることが明らかにされている。またクロスボーダーM&Aの場合には、投資対象国の外国為替レートや国内株価の全般的な動向も、進出に影響を与えていることが実証的に明らかにされている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初計画では、初年度はデータセットの整備を中心に進める予定であったが、推計作業とその結果のとりまとめまで進捗させることができた。その理由は、補助金申請後から交付までの数か月間でデータセットの作成を一定程度進められたこと、実証結果が良好であったため、複数のデータセットの変更や修正、再推計などの作業を短縮化することができたためである。海外での学会で面会した海外の研究者数名に成果の一部を公開したところ、ワーキングペーパーの送付を依頼されており、次年度中にはドラフトを完成させ、国際学術会議での発表を行いたい。実証分析が計画よりも早く進捗しているもうひとつの理由は、国際経営大学院(IMD)発刊World Competitiveness各年度版から引用した法制度関連インデックスと、東洋経済新報社『海外進出企業総覧』各年度版、トムソンロイター社から抽出したデータの関係性が極めて強く、実証分析に好結果をもたらしているため再推計等の時間、費用を極力最小化できているためである。また、これまでコーポレート・ファイナンスにおける研究を進めてきた経緯から、本研究に該当する先行研究に関する一定程度把握していたことも、先行研究サーベイが想定よりも早く進捗した一因となっている。ただし、実証分析が思いの他、進捗したことで逆に分析対象国の拡大やその他の法制度定量インデックスの追加的な採用が困難化しているため、平成25年度以降は、これら分析対象の拡大を検討しつつ、研究を慎重に進めたい。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度の実証研究では、すでに実証分析の一次推計では良好な結果が得られているため、推計結果の頑健性を検証する分析もあわせて進める。一種類の実証結果では、直接投資の種類ごとに決定要因が異なる仮説を支持する説得性に欠けるため、クロスボーダーM&A、グリーンフィールドそれぞれについて、異なる推計式を用いて同様の結果が得られるか否かを確認することを本年度の実証分析での課題とする。また、これまで研究者間の交流において研究構想を説明した際に受けたコメントを反映し、企業のネットワーク展開の程度や進出相手国の汚職などの市場公平度のインデックスも新たに規定要因として加えられるか否かを検討する。 平成25年度後半は、24年度の実証分析結果のとりまとめを行い、国外の学会での発表を行う。今年度前半にワーキング・ペーパーをまとめ、成蹊大学経済学会、IDEASワーキングペーパー公開サイトより公開する。国外での学会での発表により、研究成果に各専門家からのコメントを反映し、研究成果の研磨を進め、一連のクロスボーダーM&A関連の論文の発表の場の中心となっている国際学術誌への投稿を行う。学会発表において修正の必要が明らかとなった場合には、再推計、実証モデルの再考を行い、ワーキングペーパーの修正を行う。 暦年明けを目途ワーキングペーパーの改訂が進捗した際には、更なる学会発表の機会を探索し、コメントの収集に努めると同時に、2013年上期から下期にかけての主要学術誌の最新の関連研究サーベイもあわせて進める。本研究では標本を、投資実施国企業-日本、投資相手国-東アジア・オセアニア12カ国・地域を対象としているが、このカバレッジの拡大もあわせて検討する。こうした作業を繰り返し、平成26年度には国際学術誌への投稿を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度以降の研究費は、上記の方策に基づき、学会発表、改訂作業、新たなデータの探索、英文校閲、の4つの業務を中心に拠出を検討する。学会発表では、国際経済分野の中でも直接投資の研究発表が活発に行われている欧州金融マネジメント学会(European Financial Management Association)、英国ブルネル大学・マクロ経済研究センターのシンポジウムでの発表を計画し、本研究が分析対象とする日本企業‐東アジア・オセアニア間の直接投資に比べて、欧州主要国から東欧諸国に対する直接投資がどのような点で類似し、または異なるのかを現地で議論したい。欧州の学会出席により、ワーキングペーパーの発表と東アジアと東欧諸国の2つの新興国地域の直接投資の比較分析を行うため、今年度はいずれかへの学会出席の渡航費として予算の一部を用いたい。改訂作業については、データのカバレッジを拡大する際には、臨時傭役費としてデータ入力、整備のための費用拠出を検討したい。ワーキングペーパー作成時には、英文校閲を受ける必要があり、予算からこのための費用拠出を考える。現時点で予想される改訂作業や英文校閲作業以外に、学会では多種多様な議論が出され、いくつかの有益な示唆に対応する作業が求められる可能性が高い。こうした作業に対応するため、追加的なデータ購入費、データ整備や入力のための臨時傭役費として、予算の拠出を行う予定である。
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