研究課題/領域番号 |
24530358
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 青山学院大学 |
研究代表者 |
亀坂 安紀子 青山学院大学, 経営学部, 教授 (70276666)
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研究分担者 |
高橋 泰城 北海道大学, 文学研究科, 准教授 (60374170)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 国際研究者交流 / 行動ファイナンス / 行動経済学 / 幸福度 |
研究概要 |
本研究課題は、最新の行動ファイナンス、行動経済学、幸福度の分析を進めることを目的としており、平成24年度には以下の通り多くの成果をあげることができた。 行動ファイナンス分野については、海外の共同研究者であるノアスミス氏と新たにファイナンス実験を行った他、ワシントン州立大学教授のJohn Nofsinger 氏と東日本大震災前後の投資家行動の分析を進め論文を執筆し、専門ジャーナルに投稿した。また、単著論文として執筆した震災前後の投資家行動に関する論文が、財務省財務総合政策研究所発行英文専門雑誌 Public Policy Review に掲載された。また、これらの研究結果について、海外の大学のセミナーなどで報告を行った。行動経済学分野では、日本の大規模アンケート調査のデータを使用した時間割引率についての分析結果が Psychology という専門雑誌に掲載された。 もうひとつの大きな分析テーマである幸福度などの心理指標の分析では、研究を進めた結果として予想をはるかに超える成果が得られた。特に東日本大震災前後の日本人の幸福度や価値観の変化の分析結果は、海外からも注目され、その結果世界各国の政府代表やノーベル経済学賞受賞者であるスティグリッツらが参加したOECDの世界フォーラムでも報告する機会が与えられた。また、欧州経済研究所セミナー(於 スウェーデン大使館)、国内の大きなイベント(FPフェア)、大学主催シンポジウム、学会パネルディスカッション、新聞、海外メディアなど多様な媒体で研究成果を公表する機会があった。それらの研究成果の一部は、『日本の家計行動のダイナミズムVIII-東日本大震災が家計に与えた影響』 瀬古美喜・照山博司・山本勲・樋口義雄編、慶應義塾大学出版会の第9章「東日本大震災の幸福感への影響」として2012年6月に出版された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究課題は、最新の行動ファイナンス、行動経済学、幸福度の分析を進めることを目的としているが、特に幸福度の分析に関して予想をはるかに上回る成果が得られている。また、行動ファイナンス分野についても、予想よりも多様な形で共同研究が進展している。 研究開始時点では、ワシントン州立大学教授のJohn Nofsinger 氏との共同研究は予定していなかったが、単著論文として研究代表者が執筆した震災前後の投資家行動に関する論文の関連分析に興味があるとのことで、追加でそのような分析を行った。この分析結果についてもすでに論文としてまとめて、専門雑誌への投稿もすでに行っている。また、この研究成果について海外で報告を行ったところ関連研究をさらに共同で進めたいといった提案があり、その共同研究も開始した。 幸福度などの心理指標の分析結果については、論文としてまとめた段階でとても多くの反響があった。研究実績の概要でも説明したが、特に東日本大震災前後の日本人の幸福度や価値観の変化についての分析結果については、国内外のメディア、官公庁、政治家などからも反響があった。様々な場で世界各国の政府代表やトップレベルの研究者などからいろいろなコメントも頂いた。同時に学会パネルディスカッションの記録としての講演録、新聞記事、海外の雑誌記事などでも成果の一部を公表した。それらの研究成果の一部は、『日本の家計行動のダイナミズムVIII-東日本大震災が家計に与えた影響』 瀬古美喜・照山博司・山本勲・樋口義雄編、慶應義塾大学出版会の第9章「東日本大震災の幸福感への影響」として2012年6月に出版されたほか、『働き方と幸福感のダイナミズム』赤林英夫他編、慶應義塾大学出版会の第8章にも「東日本大震災が生活満足度と幸福感に与えた影響」というタイトルで2013年6月頃に出版される予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今後も当初の研究課題の目標に沿って行動ファイナンス、行動経済学、幸福度の分析を進めてゆくが、具体的には各プロジェクトについて以下の通り進める予定である。 行動ファイナンス分野については、まずは海外の共同研究者であるノアスミス氏と追加のファイナンス実験を行いたい。これは、もうひとつのテーマである幸福度研究の成果公表などの旅費が昨年度については当初予定よりもかさんだためである。このため、十分な数の被験者を集めてファイナンス実験を行うことが昨年度はできず、論文執筆のために追加実験が必要な状況である。また、ワシントン州立大学教授のJohn Nofsinger 氏とも新たに入手したデータの分析も進めたい。 幸福度などの心理指標の分析に関しては、現在推定方法の改善や新しい計量方法の開発を進めている。東日本大震災前後の分析に関しては、英文論文の執筆も進めているが、本年度中には改訂を終了し、海外のトップジャーナルに投稿したい。幸福度の分析に関しては、この分野の研究で有名なParis School of Economics のAndrew Clark 教授らとも共同研究を進めており、いくつかの論文執筆を並行して進めている。Clark 教授らとの共同研究では、目標所得の水準が人々の幸福度に与える影響の分析などについて、本年度中に論文をまとめたいと考えている。このほか、幸福度の分析に関しては、結婚や出産の影響、年齢(加齢)の影響、日米比較などの分析も進める予定である。得られた分析結果は、学会やメディアなど様々なところで公表してゆきたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度は、研究代表者分の研究資金が結果として不足してしまったこと、および海外の共同研究者の日本滞在日程から、研究分担者の所属先(北海道大学)でファイナンス実験を行うことができなかった。一回のグループ実験にかかる費用は数十万円以上であり、昨年実施できなかった分は本年度に実施する予定であるため、本年度消化する予定である。
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