研究課題/領域番号 |
24530360
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
渡部 和孝 慶應義塾大学, 商学部, 教授 (80379106)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 預金保険制度 / 所有形態 / モラルハザード |
研究実績の概要 |
本研究は1.預金保険制度とモラルハザード、2.銀行の所有形態とパフォーマンスの関係、3.二段階規制と銀行行動、4.政府系金融機関の融資と借り手の政治への親密性の関係、5.震災の被害を受けた地域金融の政策支援、の5テーマから構成されている。 1については、論文、Guizani and Watanabe (2014, mimeo)を英文国際査読誌、Journal of Financial Stabilityに投稿し、改訂要求の審査結果を得た。現在、審査員の要求に沿って論文を改訂中であり、平成27年度中の刊行を目指している。 2については、平成25年度に作成が完成した、エマージング国・経済別の各企業の決算情報、取引銀行情報から構成されるデータセットを用い、データ分析にあたっての仮説の設定を検討中である。本年度は、Gregory F. Udell教授(インディアナ大学)、Suparna Chakraborty准教授(サンフランシスコ大学)と問題設定にあたって議論を重ねるとともに、先行研究の詳細なレビューを行った。 4、5については、日本政策金融公庫(以後、日本公庫という)に設置された研究者、日本公庫の実務家をメンバーとする研究会、「政策金融の有効性評価に関する研究会」にメンバーとして参加し、1990年代後半から2000年代にかけての中小企業金融公庫(中小公庫)による融資契約についてのデータを用いて、金融危機時にメインバンクの貸し渋りに直面した企業に対して中小公庫が積極的に融資を行ったか検証し、その結果は、Sekino and Watanabe (2014, RIETI DP 14E-063 )としてまとめた。さらに、積極的に融資を受けた企業の借入れ後の収益性の推移について検証し、現在、その結果をまとめた論文を執筆中である。 3については、今後の研究の方向性について検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初、5テーマを掲げたが、研究は開始してみなければ成果が出るかわからないので可能性のあるテーマを多めに掲げていた。結果として、当初掲げた5テーマを4テーマに統合したものの、既に論文が完成している2テーマに加え、残りの2テーマについても分析用のデータの整理に進捗があったため。
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今後の研究の推進方策 |
論文として成果をまとめた、上記のテーマ1、テーマ4 、5に加え、残りの2テーマ(3テーマを2テーマに統合)についても研究の方向性を探り、成果を論文にまとめることができるか検討する。テーマ3については、服部正純氏(国際決済銀行)との議論を通じて、研究の方向性を定めつつある。具体的には、エマージング国・経済において、国際金融市場での社債の発行を通じた資金調達が中心の大企業の現地の銀行への預金が銀行に資金調達を依存している地元の中小企業にどのような影響を与えるかについて、大企業と中小企業のデータベースに企業の取引銀行のデータを接続して、検証することを予定している。 テーマ3については今井雅巳氏(研究協力者、Wesleyan University)と、メール、Skype通信等を通じて、研究方針について今井氏と議論を進めている。 統合したテーマ4、5については、論文を作成、今年度中に経済産業研究所のディスカッションペーパーとして刊行するとともに、英文国際査読誌への投稿を実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
書籍購入を予定していたが入荷が遅れた。
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次年度使用額の使用計画 |
前年度、購入予定であったものの、入荷の遅れた書籍を購入する。
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