本研究は当初の5テーマから1.預金保険制度とモラルハザード、2.国際金融市場におけるショックの国内金融市場への伝播、3.政府系金融機関の貸し渋り対策融資の企業の収益性への影響、の3テーマに集約した。 1については、Guizani and Watanabe (2015)について、国際査読誌、Journal of Financial Stabilityの修正再投稿要求に基づき、修正の上、再投稿した。なお、論文の修正において新たなデータ整備作業が発生したので大学院生をアルバイト雇用した。2については、服部正純教授(一橋大学)との議論に基づき、エマージング国・経済別の各企業の決算情報、取引銀行情報から構成されるデータセットを、ビューロー・ヴァン・ダイク社と新しく契約したデータベースに基づき大学院生のアルバイト雇用も実施しながら整備中である。このテーマについては、平成28年度に開始される科学研究費補助金(C)「政府による金融機関の融資への関わりについての理論・実証研究」において、引き続き、研究を続ける予定である。3については、日本政策金融公庫に設置された研究者、実務家をメンバーとする研究会、「政策金融の有効性評価に関する研究会」、に参加し、1990年代後半から2000年代にかけての中小企業金融公庫(中小公庫)による融資契約についてのデータを用いて、金融危機時にメインバンクの貸し渋りに直面した企業に対して中小公庫が実施した融資の大きさと、融資を受けた企業の借入れ後の収益性の推移の関係について検証し、その結果はSekino and Watanabe (2016)にまとめた。
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