本研究の目的は、現在のアジア為替市場における実務的側面に焦点を当てた上でアジアの現地通貨利用の拡大を考えるとともに、円がアジアの基軸通貨として利用される可能性を探ることである。日本企業を対象としたアンケート調査の結果、人民元の国際化が推進される中で、中国及び香港での元利用は急増しているものの、アジア全域での元利用はさほど増えていない。一方で、タイバーツなどのASEAN通貨は、ASEAN諸国の現地法人で今後取引を増やすと回答している企業が少なからずある。バーツ円等のアジア通貨と円の直接取引市場を創設することにより、ASEAN地域で現地通貨の利用を促進し、同時に円利用を高めることができるだろう。
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