本研究では、社会保険の未納・未加入に関して逆選択の観点から分析し、厚生損失がどの程度かを推計することを目的としている。2012年度は学術誌の『会計検査研究』(第47号、2013年3月)において宮里(2013)「社会保険の未納・未加入に関する厚生分析:アドバースセレクションの視点からの研究」として本研究の研究成果として刊行した。また2013年度は『人口動態調査』の産業別の死亡率のデータと『国民年金被保険者実態調査』の産業別の国民年金納付・未納率の情報を用いて、納付者と未納者の平均寿命の差を推計している。産業別のデータを用いてGompertz曲線を推計し、それらから得られる産業別の平均寿命と産業別の納付・未納率の情報を利用し推計を行った。さらに、最終年度の2014年度には『国民生活基礎調査』のデータに基づきながら年金加入者と年金未加入者の生存率についての分析を行った。『国民生活基礎調査』に基づいた分析では、1920年生まれの世代について分析対象を絞ると逆選択が発生していることが示唆された。 なお、関連する研究として、“Intergenerational Redistribution Policies of the 1990s and 2000s in Japan: An Analysis Using Generational Accounting” が国際的な学術誌 Japan and the World Economyへの掲載されることになった。
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