研究実績の概要 |
今年度(2014年度:2014年4月1日~2015年3月31日)における研究成果 市場取引の高速化と流動性供給システムの関係について、①文献調査、②東京証券取引所データによる実証分析、③金融危機による欧州国債市場の流動性, ④市場外取引を証券市場改革の視点から検討した。①では、高頻度取引業者はなぜ「スピード」に投資するのか、これが市場全体の流動性に大きく貢献していることを欧米の研究からサーベイし、最近、導入された規制強化策が市場の流動性にマイナスの影響を与えているという実証研究を紹介した。②我が国株式市場における高速化の影響について、取引開始前の発注行動を詳細なデータで分析し、ミリ秒単位(1秒の1000分の1)でみた価格や注文の動きを通して高速化の実態を明らかにした。高速化の価格形成に与える影響はプラスとマイナスが混在するが、2010年の高速化以前に比べて、新規注文やキャンセルのタイミングが遅くなっているものの、これが価格形成をゆがめていることはないという結論をくだした。③欧州金融危機に直面したイタリア国債市場の流動性を分析し、マーケットメイク義務を負ったプライマリーディーラーのリスク回避行動が市場の流動性枯渇のトリガーとなっていることを明らかにした。④では、証券市場改革の視点から市場外取引の可能性を検討するため、クラウドファンディングについての分析を行った。企業が実施するクラウドファンディングについては過渡期であるため、自治体が実施するクラウドファンディングであるふるさと納税について、自治体からデータを提供してもらい分析を行った。結果、株式市場と同様、クラウドファンディングの世界でもエクイティストーリーが重要であることが明らかとなった。証券市場改革においては、制度面の改革も重要だが、投資家へのストーリー訴求は引き続き重要である。
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