研究課題/領域番号 |
24530375
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 龍谷大学 |
研究代表者 |
西垣 泰幸 龍谷大学, 経済学部, 教授 (20180599)
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研究分担者 |
牧 大樹 龍谷大学, 経済学部, 准教授 (60423737)
西本 秀樹 龍谷大学, 経済学部, 教授 (70164605)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ヤードスティック競争 / 情報の非対称性 / 投票モデル / ナッシュ均衡 / 電子政府評価 / SNSによる情報発信 / 政策評価 / 行政の効率化 |
研究概要 |
①理論的なモデル構築に関して西垣は、地方政府間のヤードスティック競争モデルに住民の私的財と公共財の選好を導入し、精緻化したモデルを用いて、地方公共財供給の効率性を改善させるために政府の政策情報の開示や住民ニーズの把握が有効であることを示した。それをヤードスティック競争の実証的な検証のための分析の理論的な根拠として用いた。さらに、地方政府の政策情報の提供や住民のモニタリングを導入したモデル構築のための準備的研究を進めた。 ②西垣と牧は、日本における地方政府間のヤードスティック競争の有効性に関する実証分析に関して、都道府県の知事選挙のデータを用いてプロビット分析を行い、一定の証拠を捉えることができた。実証分析は、さらに、ヤードスティック競争のナッシュ均衡における反応関数を推計し、公共財供給における近隣自治体間のヤードスティック競争的な相互依存関係を捉えることに成功した。また、都道府県の知事選挙に関する投票モデルを推計し、特に電子政府の情報発信機能が投票率に正の効果を与えることを確認した。 ③西本は、海外協力者のWong教授とも連携しながら、日本の電子政府評価の結果に関する主成分分析とInportance=Performance分析を行い、日本の自治体では特に、情報発信機能と市民へのレスポンス機能が重視されていること、今後、SNSを用いたより住民のニーズにあった、即時的情報発信が求められることを指摘した。 ④電子政府を活用した行政コストの低減効果の分析において牧と西垣は、自治体の行政コストに関する計量分析の準備を始めるとともに、電子政府を行政サービスに活用している先進的な自治体の聞き取り調査を開始し、研究の展開に活用している。 ⑤以上の研究成果を取りまとめ、国際会議3回、国内学会3回の研究発表を行うとともに合計8編の論文に取りまとめ公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
①理論モデル構築においては、地方公共財供給の効率化と電子政府の効果や役割を明らかにし、実証研究の理論的基礎を提供した。また、シグナリング、モニタリングといった新たな概念を地方分権モデルに導入し、まったく新しいモデルの構築準備を整えつつある。 ②実証研究においては、当選確率モデルという既存の分析手法に加え、ナッシュ均衡の反応関数の推計、市町村レベルでのヤードスティック競争に拡張している。 ③電子政府の評価と効率化の役割については、定性的な結論を得るとともに、評価結果の分析を行い、SNSなどの新たな評価と分析に着手しており、また、投票モデルなど新たな視点からの評価に取り組んでいる。 ④地方政府の政策評価、行政効率化についても、データ解析、モデル構築の両面から取り組んでいる。 ⑤上記の研究成果を、国際会議や国内学会での研究発表、さらには論文公刊など国内外に積極的に発信している。
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今後の研究の推進方策 |
①新たなヤードスティックモデル構築に関して西垣は、地方政府間のヤードスティック競争モデルに、地方公共財供給の効率性を改善するための政府の政策情報の開示や住民ニーズの把握の有効性を検証するため、地方政府の政策情報の提供や住民のモニタリングを導入したモデル構築を進める。昨年度の成果に基づき、政府の政策情報の開示や住民のニーズ把握を、非対称情報下のシグナリング、モニタリング均衡、住民のVoiceとExisit概念を活用してモデル構築してゆく。 ②西垣と牧は、日本における地方政府間のヤードスティック競争の有効性に関する実証分析に関して、引き続き、都道府県の知事選挙のデータを用いた当選確率関数のプロビット分析、ヤードスティック競争のナッシュ均衡における反応関数を推計の精緻化をするとともに、市町村レベルでのヤードスティック競争の実証分析を進展させる。 ③西本は、海外協力者のWong教授とも連携しながら、引き続き日本の電子政府評価の結果に関する分析やInportance=Performance分析を行う。日本の自治体では特に、情報発信機能と市民へのレスポンス機能が重視されていることから、SNSを用いた、より住民のニーズにあった即時的情報発信の有効性評価や政策提案を行ってゆく。 ④電子政府を活用した行政コストの低減効果の分析については、自治体の行政コストに関する計量分析を始めるとともに、電子政府を行政サービスに活用している先進的な自治体の聞き取り調査に基づいて、効率性評価の分析とヤードスティック関数による住民の政策評価とを関連付けて実証研究のデザイン、実施を検討する。 ⑤以上の研究成果を取りまとめ、国際会議や国内学会における研究発表を行うとともに、学術論文に取りまとめ、研究成果を積極的に国内外に発信してゆく。
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次年度の研究費の使用計画 |
①理論的、実証的研究を推進するための参考図書や資料を購入する。 ②都道府県レベル、市町村レベルの大規模なパネルデータを迅速に統計処理するため、統計解析ソフトを購入する。 ③先進的な知見を得るための研究会開催、データ整理や統計解析のための作業補助員などの雇用のための謝金を用いる。 ④研究成果の公開、公表のため、国際会議や国内学会への出張、また、国内外の大学・研究機関へのセミナーなどの出張を行うための交通費を使用する。 ⑤その他、英語校閲料、論文投稿料などを使用する。
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