研究課題/領域番号 |
24530378
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
上村 敏之 関西学院大学, 経済学部, 教授 (00328642)
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研究分担者 |
中澤 克佳 東洋大学, 経済学部, 准教授 (20453855)
齊藤 由里恵 徳山大学, 経済学部, 准教授 (60552502)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 社会保障 / 受益と負担 / 持続可能性 / 地方財政 / 所得再分配 |
研究概要 |
研究の目的は、社会保障の持続可能性の確保、さらには社会保障の受益と負担について、世代間、地域間、所得階級間を表現するモデルから評価を行い、日本の社会保障の政策的な課題と対策を考察することにある。特に本研究では、国の社会保障のみならず、地方自治体による社会保障に注目する。 平成24年度においては、介護保険制度と国民健康保険制度の受益と負担、および財政の持続可能性について研究を行った。学会およびセミナーでは、合計7回の報告(うち学会報告は3回)を行った。また、4つの論文が研究雑誌に掲載された。 いずれの報告および論文も、地方財政の観点から、介護保険事業および国民健康保険事業における社会保障の持続可能性について検討し、どのような政策が持続可能性を高めるのかについて検討している。 「社会保障と税の一体改革」が進められるなか、消費税の税率の引き上げが予定されているが、一方で社会保障費の効率化は、社会保障財政にとっては重要な課題である。平成24年度は、介護保険制度については居宅、地域密着型、施設の3サービス間の関係を計量的に分析し、サービスの連携について分析した。また、介護保険制度とともに、国民健康保険制度においても、広域化の経済効果と保険料収納率について考察を行った。現在の社会保障改革においては、保険者の単位の広域化が検討されており、ホットイシューを扱う研究が展開できたといえる。また、保険料収納率については、先行研究が扱ってこなかった財政調整制度に着目した分析を行うことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度の研究実施計画においては、特に介護保険制度と国民健康保険制度に着目して分析を行った。介護保険制度については3サービス間の連携について考察し、国民健康保険制度については広域化と保険料収納率について検討した。学会およびセミナーでの報告は、合計7回にも及び、それらは論文にまとめて、研究雑誌に投稿中である。今後に論文としての成果が出てくると考えられる。ただ、介護保険制度の持続可能性の分析は、セミナーで報告したものの、現時点ではモデルに修正が必要となっている。この点を除けば、おおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策は、様々な研究と作業を同時並行で行うことが必要となる。まず、今後の分析に必要なデータの整備作業である。これまでは、インターネットなどで入手できるデータによる分析が主であったが、今後は加工が困難なデータを用いる計画となっている。たとえば地方自治体の性質別・目的別クロス表の決算データや、『全国消費実態調査』および『国民生活基礎調査』の匿名データである。これらのデータを分析可能なレベルにするためには、時間をかけてデータ整備を行う必要がある。また、これまでの研究で投稿してきた論文が、掲載されるかどうかのチェックを受けて返ってくると考えられる。掲載にあたって、多くの修正が必要ならば、時間と労力をかけて、それなりの体制で臨むことが求められる。以上のように、未来に向けた研究についての作業だけでなく、過去の研究の修正を同時にこなすだけの研究時間の確保と研究費の配分が、今後の研究の推進方策として求められる。
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次年度の研究費の使用計画 |
地方自治体の性質別・目的別クロス表の決算データや、総務省『全国消費実態調査』および厚生労働省『国民生活基礎調査』の匿名データの入手は終えているが、データ整備がまだ完成していない。この作業は、ほとんど手作業であり、大学院生を雇用することでデータ整備を行う。また、特に匿名データについては、匿名データだけでは分析ができないために、補完的に他のデータを組み合わせる作業が必要な場合がある。その場合も、学生にデータの収集を実施してもらわねばならない。実際の分析についても、シミュレーションモデルをコンピュータ言語を用いたプログラミングによって構築している。大きいモデルを扱う予定であり、プログラム作成をいくつかのパートに分解して、共同作業でモデルを構築する。これらの作業のために、コンピュータの周辺環境や消耗品、または他の研究者からの専門知識の提供、さらには研究協力者との研究打ち合わせが必要となる。
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