研究課題/領域番号 |
24530379
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 広島修道大学 |
研究代表者 |
山口 力 広島修道大学, 経済科学部, 教授 (60435047)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 結託耐性ナッシュ均衡 / ハブアンドスポーク提携 / 環境協定 / 国際情報交換(カナダ) |
研究概要 |
平成24年度は予定した年次計画に従い、複数の経済主体間による部分的提携問題に焦点を絞り関連文献の収集・精読作業を精力的にすすめた。本研究は、複数の政府間による政策協調がどのように形成・維持されるのか、各経済主体の経済変数や非対称性、および意思決定のタイミングが政策決定に及ぼす効果について、理論モデルを構築・分析することで政策的インプリケーションを明確化することを目的としている。本年度は国際的な環境協定(International Environmental Agreement)の有効性について、公共財の自発的供給モデルに結託耐性ナッシュ均衡(Coalition-Proof Nash Equilibrium)の概念を導入することで分析を試みた。主な分析結果は以下のとおりである。 ・国家間協定により環境(公共)財生産費用が低下する、すなわち、生産技術のスピルオーバー効果が存在する場合、結託耐性ナッシュ均衡における提携構造は協定に伴う混雑費用に依存し、提携費用が高くなるにつれて全体協調(grand coalition)から単独提携(singleton)へと移行する。ハブ・アンドスポーク提携(Hub-and-spoke coalitions)は、相対的に厚生水準の低い国家間による提携離脱が生じるため、結託耐性ナッシュ均衡としては起こらない。 ・協定間における所得再分配政策を許容した場合、結託耐性ナッシュ均衡における提携構造は提携費用が十分に低ければ1国以上の単独提携と複数国による部分提携、提携費用が高い場合はすべての国による単独提携となる。 ・協定間の所得再分配政策を許容することで各国家の厚生水準は共用しない場合よりも高くなり得るが、同時に協定から離脱する誘因も高まるため、提携費用が低い場合は「所得再分配政策を許容しない」という政策が社会厚生改善に有効である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度は4年計画の初年度であり、予定した年次計画に従い、複数の経済主体間による部分的提携問題に関する文献の収集・精読作業を精力的にすすめるとともに、その応用として国家間環境協定に関する提携問題を扱った理論モデルの構築・分析を試みた。ここで得られた研究成果は「Coalition-Proof Hub-and-Spoke and Multilateral Green Technology International Agreements」としてまとめられ、学会報告のため改訂中である。 当初の目標は理論モデルの構築を想定していたが、初稿段階ではあるが学会報告論文執筆に至り、研究計画通り順調に推移していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
初稿段階の論文を専門学術誌に投稿できる水準まで改訂作業を集中的に行い、同時に理論モデルの拡張と分析、論文執筆、学会発表と順次行う予定である。 具体的には、これまでの成果をまとめた「Coalition-Proof Hub-and-Spoke and Multilateral Green Technology International Agreements」を2013年8月にイタリアで開催される第69回国際財政学会にて報告する予定となっている。また、国内の学会や関連ワークショップ等でも報告し、専門家のコメントを参考に改訂し、専門学術誌からのアクセプトを目指す。 さらに、時間的に余裕があれば、上記の理論モデルの拡張による分析にも取り組み、次年度以降の学会やコンファレンス等で発表可能な初稿段階の論文を執筆する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
理論モデルの構築・分析に関連した資料(学術雑誌および専門洋書等)、数値解析モデル構築に必要となるアプリケーションソフト、および、結果の整理に利用する記録メディア等、物品費として使用する予定である。また、国内外の学会やセミナー、ワークショップ等で研究成果を発表する際、旅費として使用する。さらに、論文を専門学術誌に投稿する際には専門業者に英文校正の依頼をする予定である。
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