まず最終年度の研究成果としては、第一に石油産業史研究について、昨年度執筆した論文「石油産業における独占体制の成立」を改訂・拡充し、「戦間期の石油産業の変化と「独占の成立」」として脱稿した。同論文は2016年度中に『資本主義経済の歴史(仮)』の第7章として刊行される予定である。また宝田石油の成立から日本石油との合併による消滅に至る生涯を通観し、「宝田石油の30年」という題目で講演した。第二に、昨年度執筆した論文「朝鮮北部在住日本人の戦時と戦後」を改訂し、「植民地企業城下町の構築と変容」「朝鮮北部工場群の継承と従業員の「脱出」「引揚」」という2本の論文として脱稿した。両論文は白木沢旭児編『帝国と地域社会』(北海道大学出版会、2017年)の第10・11章として刊行される予定である。 次に研究期間全体を通じて実施した研究の成果としては、第一に佐渡鉱山に関する技術を中心とした研究が当初の予定通り進捗し、小風秀雅編集・発行『受託研究「近代の佐渡鉱山の歴史的価値に関する研究」』の毎年度の報告書で成果を積み重ね、2014年度の「近代佐渡鉱山史~「貧鉱化への対応」の視点から~」という論文で技術の視点で近代を通観することができた。第二に、石油産業史研究においては、上記論文の執筆を通じて戦間期から戦時期の国家統制との関係を明確化することができた。 なお、研究期間中の成果発表には(上記講演を除き)至らなかったが、戦間期の日本石油・宝田石油・旭石油に関する資料の収集と分析を行った。それを踏まえ、当該期の後2社について論文を執筆し、2016年度中に所属先紀要に投稿する予定であり、また同年度中に日本石油産業史に関する単著の執筆を予定している。また同年10月には政治経済学・経済史学会秋季学術大会(立教大学)のパネル・ディスカッションで「明治期~昭和戦前期における佐渡鉱山の技術」として報告を予定している。
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