研究課題/領域番号 |
24530387
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
猿渡 啓子 東北大学, 経済学研究科(研究院), 教授 (80178821)
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キーワード | マレーシア多国籍企業 |
研究概要 |
平成25年度では,マレーシア現地企業の海外展開を,外資多国籍企業とのリンケージ企業としての成長という観点から検討した。その際,政府の政策による資源配分も影響すると考え,政府の中小企業育成策もまた,影響要因として組み込むことにした。マレーシア政府は1991年に中長期政策を公表し,その中の「第6次マレーシア計画」出においては、2000年までに製造業部門の比率を43%にまで引き上げることが目標とされた。しかし,実際には,現地中小企業は外資企業との関連業種ではない業種に集中していたため,政府の介入によってリンケージ産業企業の支援育成が推進されることとなった。現地企業の発展ひいてはその海外展開にとってのその後の転換期は,1996年に策定された「第2次工業化基本計画」の中で提唱された「クラスター・ベース産業開発アプローチ」である。このアプローチをサーベイした結果,私は,クラスター・ベースの産業開発アプローチが導入された結果,華人系企業やマレー系企業がリンケージないしベンダー企業という立場とは異なる,いわば独自路線での発展が可能となったのではないか,との仮説を考えた。この仮説を平成26年度に実証し,本プロジェクトの最終成果として公表したい。この仮説の妥当性は,1997年のアジア通貨危機で生き残ったのは,それまで金融業や不動産業を中心として発展した華人系企業が食品などの種類の製造業に進出した華人系企業が多かったとの最近の調査論文からも認められるのではないかと考えている。つまり,組立て産業の多国籍企業とのリンケージ企業となる発展経路ではない方向性の発展である。それらの企業は金融部門をもっていることがわかっている。それらの企業の海外展開の中心は中国であったことから,華人系のネットワークとしてどのような関係があったのかも明らかにする必要がある。これらは平成26年度の課題としたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現地企業の発展ひいてはその海外展開にとってのその後の転換期は,1996年に策定された「第2次工業化基本計画」の中で提唱された「クラスター・ベース産業開発アプローチ」ではないかとの考えに行き着いた。この産業開発アプローチが導入された結果,華人系企業やマレー系企業がリンケージないしベンダー企業という立場とは異なる,いわば独自路線での発展が可能となったのではないか,との仮説を持てたことは,平成25年度までの成果である。しかし,会社内部資料など一次資料から,企業における経営資源の蓄積の実態を把握するという目標は達成されたとはいえない。この目標達成が難しかった理由は,25年度までに収集できた内部資料に所収されていた情報内容に,経営資源の蓄積の実態を示す情報が想定したより少なかったことである。この経験を踏まえ、平成25年度には,別のアプローチによって、上記の問題を解明できる情報収集に努め、マレーシアの多国籍企業における経営資源の蓄積の過程の背景および経営資源蓄積の実態を把握したい。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度の研究では,企業における経営資源の蓄積の実態を把握するという目標は達成されたとはいえない。その理由は,当初想定していた会社内部資料など一次資料から収集できると考えていた情報内容に,経営資源の蓄積の実態を示す情報量が想定したよりずっと少なかったことである。この経験を踏まえ、平成25年度には,別のアプローチを考え出し、上記の問題を解明できる情報収集に努め、マレーシアの多国籍企業における経営資源の蓄積の過程の背景および経営資源蓄積の実態を把握したい。 また,継続して,マレーシアの代表的多国籍企業における人的資源の性質変化,資金的資源の性質および企業内部の制度の経年的変化に明らかにし,マレーシアの多国籍企業の人的資源の性質,資金的資源の性質,および内部制度など経営資源の蓄積実態を理解し,解析し,本研究の最終成果をまとめることを目標としたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
購入予定のセット本が残金を超えたため、次年度にその入を延期した。 本プロジェクトに必要なセット本の購入に支弁する。
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