マレーシアの海外直接投資は固定相場制から管理変動相場制に移行した2005 年から拡大し、2007 年以降海外直接投資額が対内投資額を上回っている。2014年で業種別ではサービス産業が約6 割(金融が約3割)、石油・ガス等の資源分野が約3割、オイルパーム等の農業分野が8%、製造業は6%である。海外直接投資の主たる担い手は政府系企業や華人系企業の大手企業であるが、分野別には政府系多国籍企業の主要分野は資源分野、華人系多国籍企業の主要分野は不動産や金融などのサービス分野である。本プロジェクトの最終年度では、海外直接投資や政府系・華人系企業に関する既存研究の検討を継続して行い、その知見を踏まえて政府系企業の多国籍化のプロセスと特徴を明らかにしようと試みた。政府系企業は独占的企業という点で華人系多国籍企業との違いがある。資源分野の政府系企業の活動が政府の政策や外交問題と絡んでいることも、民間企業との違いを生み出す要因である。21世紀に入ると新興国多国籍企業の実証研究だけでなく、実態をモデル化した理論研究も登場した。しかし、理論は製造業企業の実体のモデル化である。マレーシア企業の優れた実証研究は貴重な知見と示唆を与えてくれたが、まだ精査・実証すべき論点も残されている。今年度は資源分野の政府系多国籍企業への上記の理論の適用の妥当性も含めて検討した。目下、最終成果物を準備中である。
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