研究概要 |
(1)19世紀から第一次世界大戦前のロンドン金融市場を対象に,投資銀行の先駆形態となる,ロンドンの国際銀行業マーチャント・バンクのビジネスモデルを解明する文献研究を行った。先ず,この問題に関して定評ある研究書となるS.D. ChapmanとToshio Suzukiの著作の方法や構成を再吟味した。通常,マーチャント・バンクのビジネスモデルは「国際的な貿易金融と債券の発行」としてまとめられているが,業態を画一化することはできない。マーチャント・バンクの取り上げるビジネス範囲は,①手形引受,②証券発行や企業金融,③証券取引,④証券投資管理,⑤商品取引など多岐にわたる。このため,社史や経営者の伝記を援用して,有力商会の業務内容を補足した。参考にした文献の主なものは,Erik Banks, Baring Brothers & Co. Limited, Kathleen Burk, Nail Ferguson, Saemy Japhet, John Orbell, Richard Roberts, Philip Zieglerなどの著作である。文献検索に当たってはBusiness Archives CouncilのデータベースBusiness History Explorerを参照した。また,PCとスキャナーを用いて関連箇所の記述をデジタルデータ化した。 (2)アーキヴァル史料に関しても調査と収集を行った。ベアリング商会とN.M.ロスチャイルド商会のアーカイヴズの分類カタログを精査し,文書の種別と所在を確認した。ロンドンとニューヨーク金融市場の結節点となるモルガン・グレンフェル商会の文書について,ロンドン・メトロポリタン・アーカイヴズを調査した。同時に,東洋為替銀行としてマーチャント・バンクと密接な取引関係を有したチャータード銀行のアーカイヴズから,手形引受に関する史料を収集した。
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