研究課題/領域番号 |
24530390
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
森 良次 広島大学, 社会(科)学研究科, 教授 (10333999)
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キーワード | ドイツ玩具産業 |
研究概要 |
ドイツの高質品生産とそれを支える歴史的条件がいつどのようにして形成されたのかを明らかにすべく、最終消費財産業である玩具産業を取り上げ、産業史研究を行った。その結果明らかとなったのは、①ドイツ玩具産業の高質品化が顕在化するのは19世紀末のことであり、ニュルンベルクの金属製玩具産業の興隆がそれを牽引したこと、②玩具産業の主要な労働力給源である山村の副業から出発した家内工業は、劣悪な労働・生活条件のために19世紀末の社会政策学会で「社会問題」として取り上げれていたが、ドイツ玩具産業の国際競争力の源泉は価格ではなく、製品の品質・多様性にあったこと、すなわち、ドイツにおいて玩具産業は確かに相対的低賃金部門ではあったが、国際市場においてはドイツ玩具産業は既に低賃金労働力のみに依拠して競争できる状況にはなく、むしろ新製品開発能力と産地全体でのフルライン生産よって輸出を拡大したこと、③ニュルンベルクの金属製玩具産業の主たる労働力給源は都市手工業者であり、彼らがツンフト的伝統に固執せず、金属製玩具という非伝統財の開発・生産とその機械制生産に積極的に取り組んたことが玩具産業の高質品生産を推進したこと、である。 今後の課題としては、①日本やアメリカ合衆国など他の主要玩具生産国との競争関係のなかでドイツ玩具産業を位置づけ競争力評価をすること、②玩具産業の国際比較研究によりドイツ玩具産業の特徴とそれを条件付けた諸制度を究明すること、である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初検討対象としていた西南ドイツや西北ドイツとは異なる地域を取り上げて研究しており、さらに中小企業性の強い玩具産業を検討しているため、先行研究の把握と史料の発掘に時間を要した。
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今後の研究の推進方策 |
ドイツ玩具産業の発展を可能ならしめた山村家内工業と都市手工業の経営実態と労働力の存在形態を明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
史料調査が予定通りの期間実施できなかったことに加えて、史料のデータ入力作業を依頼する必要のある史料を入手するすることができなかったため。 夏休み期間などを利用し、まとまった期間の史料調査を実施する。
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