研究課題/領域番号 |
24530396
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
金井 雄一 名古屋大学, 経済学研究科(研究院), 教授 (30144108)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ポンド イギリス |
研究概要 |
今年度は、まず第1に、ヨーロッパ決済同盟(EPU)の成立過程と、そのポンドへの影響を検討し、イギリスはEPUがポンドの復権が期待できる形式になった時に参加をに決定したこと、EPUの下で実際にポンドの国際的使用が拡大したこと、をそれぞれ解明した。すなわち、スターリング地域諸国においては準備通貨として、 スターリング地域の内外においては運転残高として、それぞれポンド保有が増加した ことを確認した。ただし、スターリング地域以外においては、準備通貨としての保有 が減少傾向にあったことも検出した。 成果の第2は、ポンドの交換性回復について、当初は変動相場制的な回復構想があったこと、チープ・スターリング問題が大きな意味をもっていて、交換性回復が急がれたのはその対策でもあったこと、1958年のヨーロッパ主要諸国同時交換性回復は決してEPU諸国の協調とは言えないこと等々を実証的に指摘したことである。 第3としては、ユーロダラー市場の生成・発展とシティの復活の関連を解明したことを挙げることができる。ユーロダラー取引の発生理由を検討し、ユーロダラー市場がなぜロンドンにおいて最も発達したかを明らかにし、イングランド銀行とイギリス大蔵省の内部資料を用いて、その規模と発展ペースも確認することができた。 以上の成果を、全体としての課題である戦後ポンド史の見直しにどのように生かしていくかの考察と、1967年ポンド切下げ、イギリスのEEC加盟についての検討が25年度の課題になる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ロンドンでの資料調査・収集については、大蔵省関係もイングランド銀行関係も 順調に進み、24年度に検討を予定していた論点は概ね済ませることができた。 学会報告も2回行ない、論文も2本刊行した。 25年度の資料調査の準備も進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
24年度の成果を全体としての課題にどのように生かしていくかを考察すること、 1967年の戦後2回目のポンド切下げおよびイギリスのEEC加盟とスターリング 地域解体について、考察のための実証的根拠を整理すること、が25年度の課題であ る。 25年度も夏休みにロンドンへ出張し、国立公文書館においてイギリス大蔵省の資 料、イングランド銀行文書室において同行の資料、をそれぞれ閲覧、精査する。 1960年代から70年代前半にかけての国際通貨制度の混乱にポンドの側から接近する ことにより、従来と異なる把握を提起していきたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
資料調査・収集のため、ロンドン(The National Archive および The Bank of England Archive)に2週間程度出張する。 国会図書館等、国内の資料調査も行なう。 イギリス金融史関連の公刊資料、文献を購入する。
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