第二次大戦後のポンドについては、イギリス経済の地位低下とともにひたすら衰退の道をたどったという把握がこれまで一般的だったが、ブレトンウッズ会議、英米金融協定、交換性回復失敗、切下げ、ヨーロッパ決済同盟参加、交換性回復等々の事態を詳細に検討すると、そのような認識の一面性が明らかになってくる。従来の単純な衰退史は、ポンド譲位を可能にするユーロダラー市場発展の意義を軽視してきた。ポンド政策は、スターリング地域維持を図る一方でEEC加盟が試みられるなど一時混迷するものの、ロンドンにおけるユーロダラー取引を育成しつつ、現実の進展に沿う形で、最終的にポンドの準備通貨機能放棄へと収斂していったのである。
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