研究課題/領域番号 |
24530397
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
友部 謙一 大阪大学, 経済学研究科(研究院), 教授 (00227646)
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キーワード | 乳児死亡 / 疾病構造 / 生活環境 / 死亡統計 |
研究概要 |
本年度は1)大正期・昭和戦前期に調査された各町村区単位の乳児死亡統計を全国的に集計し、分析可能な時系列データを作成した、2)町村区未満の小規模地区の乳児死亡統計を最大限収集し、分析可能な統計データシートを作成した、そして3)近代日本の死因別死亡統計、とくに乳児死亡との関連の深い疾病死亡統計を精査・再点検した。それにより近代日本における疾病構造の転換(疫学的転換Epidemiologic transition)の全体像を精確に再構成することができた。その研究成果は国際学会で報告され、さらに国内雑誌(Osaka Economic Papers)にも掲載された。この研究の背景には、「疾病及び関連保健問題の国際統計分類」(ICD)による死因分類が1900年以降ほぼ10年毎に変更され、『衛生局年報』と『人口動態統計』をそのまま連結させることができなかった事情がある。最後に、1)から3)の作業に基づき、乳児死亡とその関連疾病構造との関係を核とした特定時空間の生活環境を精確な統計データに基づき分析・考察した。その研究成果は、"Urban laboring poor against Infant Mortality"(with Higami Emiko,Dr.)および"The Regional variation of mortality in Modern Japan"(with Hanashima Makoto,Dr.)として、2013 Social Science History Association Conference(米国・シカゴ市)で報告・討議された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究目標はつぎの3点である。1)大正期・昭和戦前期に調査された各町村区単位の乳児死亡統計を全国的に集計し、分析可能な時系列データを作成すること、2)町村区未満の小規模地区の乳児死亡統計を最大限収集し、分析可能な統計データシートを作成すること、最後に、3)近代日本の死因別死亡統計、とくに乳児死亡との関連の深い疾病死亡統計を精査・再点検することである。これらの目標に対して、実績としてデータ作成については、1)基本的な乳児死亡統計(市町村別)データの収集と時系列統計の完成、2)地域単位の乳児死亡統計の収集とそのデータシートの完成:a)脚気・食生活・乳児死亡の関係、b)結核(慢性感染症)と乳児死亡の関係、をあげることができる。さらに それらに基づいて論文の作成を行い、11月米国シカゴSocial Science History Association年次大会において報告および討議が行われた(脚気・食生活・乳児死亡の研究および疾病別死亡統計の精査)。さらに、専門学術雑誌での論文掲載(Osaka Economic Papersや『適塾』)や専門論文集(Environmental History in East Asia: Interdisciplinary perspectives)への論文所収(Infant mortality and beriberi in Osaka city between the world wars: impact of the mother’s diet on infant health)も行われた。これらの研究活動を通じ、当初の目標を概ね遂行したものと評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
今後の方針としては、引き続き、1)基本的な疾病別死亡統計ならびに乳児死亡統計(市町村別)を使った時系列分析を進め、つぎに2)地域単位の乳児死亡統計の時系列分析を、a)世帯労働・食生活・乳児死亡の関係、b)世帯・行政・地域・社会資本と乳児死亡の関係を中心に分析を進め、3)分析と論文の作成を作成し、2014年4月のEuropean Social Science History(オーストリア・ウィーン市)および11月のSocial Science History Association年次大会(カナダ・トロント)で報告を予定してる。また、2015年11月には米国ボルチモアでのSocial Science History Association年次大会での報告も準備している。
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