研究課題/領域番号 |
24530402
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
永岑 三千輝 横浜市立大学, 都市社会文化研究科, 客員教授 (70062867)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 原爆開発 / 原子力開発 / ハイゼンベルク / シュペーア / フォン・ヴァイツゼッカー / ヒトラー / ゲーリング |
研究概要 |
ナチス戦時経済体制が本格的な総力戦段階に突入する1942年初めから、原爆開発問題がどのように検討され、進展したのかを解明するため、文書館一次史料の調査を行った。軍需省の文書を調べるためドイツ連邦文書館(ベルリン、リヒターフェルデ)のR3(シュペーア省)の文書を調査し、物理学研究者たちの状態を調べるためマックス・プランク協会文書館を調べた。 その調査のなかから、42年から43年にかけてのドイツ軍需経済の重点が、対ソ戦におけるソ連圧伏にあり、その目的にかなった軍需物資に投資(人的・素材的生産諸要素)を集中化させていることが明らかとなった。その窮迫下でのカイザー・ヴィルヘルム物理学研究所の状況も史料的に確認できた。 その中でも特筆すべきこととしては、連合国対枢軸国の対抗軸が明確になった段階で、とりわけアメリカの参戦という厳然たる事実の中で、「画期的な武器」の開発なくしては、戦争に勝てないという認識も、特に軍部およびシュペーアにおいて明確化した。 したがって、そうして画期的武器としての原爆開発は、もし可能であれば何とか実現したいという希望が軍部とシュペーアにはあり、42年初めに物理学者たちが提案した内容を検討しようという姿勢が明確になった。その実現可能性を確かめるために、42年6月、軍需省・軍部とハイゼンベルクほかの物理学者たちの会議が開催された。この間の経緯を史料の発掘・解明でフォローすることができた。 そうした史料探索を踏まえ、二度目の文書館調査をミュンヘンのドイツ博物館付属文書館で行った。42年から43年における原子力研究・原爆開発責任者のハイゼンベルクおよびその他のカイザー・ヴィルヘルム物理学研究所の署員たちの文書の探索を行い、必要な文書のコピーを行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画で当初予定した二つの文書館に第一次的な調査を順調に行うことができ、軍需省文書、およびドイツ博物館ハイゼンベルク文書を調査して、我が国では未開拓の関係文書を集めることができた。 また、その一部を解読し、それを踏まえて、中間報告的な論文を横浜市立大学論叢(第64巻3号、河野純一教授退職記念号)に投稿(2013年1月31日)することができた。そのタイトルは、「1942年ドイツ軍需経済の課題とシュペーア―ナチス原爆開発挫折の要因分析のために―」である。
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今後の研究の推進方策 |
新年度は、ドイツ連邦文書館の軍事文書館(フライブルク)での調査を行う予定である。ここでは、軍部サイドの武器開発計画、武器調達計画の諸文書を探索したい。特に、原爆開発にかかわる陸軍兵器局の関係者の文書を中心に、調査をすすめたい。 また、予算的に切り詰めて、できれば、ベルリンの軍需省の文書も、再度調査を行いたい。 さらに、軍部の武器調達を左右する問題としては、第一次大戦における総力戦の在り方、およびその敗北の歴史的経験が大きく関係してくるので、フライブルクから近いフランスの第一次大戦記念の歴史博物館も、週末等を利用して調査しておきたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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